高い倫理観が求められる教育機関の元トップが巨額横領事件の容疑者として逮捕された。舞台となった学校法人明浄学院では近年、役員の交代や職員の一斉退職といった“異常事態”が続発し、学生や保護者の間でも動揺が広がっていた。
法人は大阪観光大のほか、まもなく創立100周年を迎える女子校の明浄学院高なども運営しているが、関係者によると、学生数の減少もあり、資金繰りが悪化していたという。
経営の改善を図ろうとした法人は平成27年、理事の大半を入れ替えるなどし、てこ入れを図った。そして29年6月、外部から理事長に登用されたのが大橋美枝子容疑者だった。
だが、大橋容疑者が何を請われて教育機関の舵取りを託されたのかははっきりせず、自らが絡む資金流用疑惑の発覚により、法人を去っている。
法人の運営はその間も迷走し、大橋容疑者も含めて4人もの理事長が交代する事態に。高校で働いていた教職員は「アットホームだった教育現場は崩壊した。教員側は、運営陣から何をされるか分からない状態だった」と証言。賃金カットなどもあって29年3月末には約20人の教職員が一斉退職している。
学校経営をめぐる混乱は保護者にも波及。状況を具体的に説明しない学校側に不信を募らせた一部の保護者と法人側が名誉毀損(きそん)などを主張して、訴訟沙汰にもなった。
公表資料などによると国は日本私立学校振興・共済事業団を通じて16~30年度に計14億7千万円、大阪府も26~30年度に計9億8千万円を法人に補助していた。
一連の問題が報じられたことを受け、文部科学省は今年度分の国の補助金を保留に。府も過去の補助金がどのように使われたのか調査に乗り出している。