日本の学習塾業界、倒産が過去最多ペースに?少子化だけでは語れない構造変化

今年1月、大学受験を直前に控えた生徒たちが通っていた予備校「ニチガク」が突然閉鎖し、運営会社が倒産したニュースは、教育業界に大きな衝撃を与えました。合格を目指し、多大な期待と費用を投じていた生徒や保護者の方々の心境を想像すると、その負担は計り知れません。現場では混乱が生じ、多くの教育関連企業が支援に乗り出す異例の事態となりました。この出来事は、日本の学習塾業界が直面する厳しい現実の一端を象徴しています。

学習塾の倒産件数が過去最多ペースで推移している様子学習塾の倒産件数が過去最多ペースで推移している様子

なぜ「学習塾の倒産」が増えているのか?

帝国データバンクの調査結果によると、2025年1月から9月の間に発生した学習塾経営事業者の倒産件数は37件に達し、過去最多のペースで推移していることが明らかになりました。この数字は、負債1000万円以上の法的整理に至ったケースのみを対象としており、小規模な廃業や自主的な撤退、いわゆる「静かな幕引き」は含まれていません。学習塾は比較的開業しやすいビジネスモデルであるため、表面化しない廃業が相当数存在すると見られています。実際に、学習塾向けソフトウェアを扱う立場からも、契約終了の申し出が多く寄せられており、水面下での撤退の多さを実感します。

では、この倒産増加の背景には何があるのでしょうか。真っ先に「少子化」が頭に浮かびますが、果たしてそれだけで現状を説明しきれるでしょうか。

学習塾の競争を加速させた「テクノロジー」と構造変化

元々、学習塾業界は開業の障壁が低いことから、参入しやすいと同時に撤退もしやすいという特徴を持っていました。参入が容易であることは、競争が激しく、淘汰のサイクルも速いことを意味します。近年、この競争サイクルを劇的に加速させているのが、テクノロジーの普及です。

映像授業や先進的な学習管理システムの活用により、たとえオーナーが一人でも、30名規模の生徒を抱えれば十分に採算が取れるビジネスモデルが現実のものとなりました。これにより、多くの常勤講師を抱える必要がなくなり、新規参入は一層容易になりました。結果として事業者数は増加し、それに比例するように撤退も増えるという構造的な側面が強まっていると感じられます。

一方で、テクノロジーを戦略的に活用し、地方で職員一人体制の小規模教室を効率的に運営しながら、機動的に教室数を増やし短期間で成長を遂げた学習塾も存在します。これは、テクノロジーが業界内の競争環境を激化させると同時に、新たな成長の機会も生み出していることを示唆しています。学習塾業界は、従来の常識にとらわれない構造変化の渦中にあると言えるでしょう。


参考文献: