韓国では、初夏としては異例の猛暑が続いた後、南部から中部にかけて局地的な豪雨が繰り返し発生しています。今年の夏に見られる極端な猛暑と豪雨のサイクルは、気候変動の加速によってこうした異常気象が「ニューノーマル(新しい基準)」となり、関連被害が一層深刻化するという懸念を強めています。特に、去る19日には慶尚南道山清郡のある村で土砂崩れが発生し、住宅が破損するなど、その影響はすでに顕在化しています。
大雨による土砂崩れで破損した韓国・慶尚南道山清郡の住宅。気候変動による異常気象の被害が深刻化している様子を示す。
記録的な初夏の猛暑:ヒートドーム現象が引き起こす熱波
今年の早い猛暑はその兆候でした。7月初旬、8日には京畿道光明や坡州をはじめとする首都圏各地で、観測装置の基準で40度を超える極端な熱波が観測されました。ソウルの最高気温も37.8度に達し、1907年の気象観測開始以来、7月初旬としては最高記録を更新する事態となりました。この猛暑の背景には、北太平洋高気圧とチベット高気圧が韓半島(朝鮮半島)を覆い、熱が逃げられない「ヒートドーム現象」が発生したことが挙げられます。
猛暑から一転、局地的な「200年に一度」の豪雨へ
猛暑のピークが過ぎた後、気象状況は一変しました。16日からは豪雨が各地を襲い、忠南、全南、慶南などでは累積500ミリを超える記録的な降水量を観測。特に忠南瑞山で413.4ミリ、光州広域市で426.4ミリなど、17日の一日だけで過去の日降水量を大幅に更新する地域もありました。さらに20日には、京畿道抱川で1時間に104ミリという「200年に一度」といわれるレベルの猛烈な雨が降り注ぎました。
韓国気象庁のイ・チャンジェ予報分析官は、「北から南下した冷たく乾燥した空気と、南から流入した高温多湿の空気が長時間拮抗し、異例の大雨をもたらした」と説明しています。すでに梅雨が明けたはずの南部地方などで、場所を変えながら集中豪雨が続いたことは異例中の異例であり、これは北太平洋高気圧が東側に居座り、低気圧が抜け出せずに停滞した影響と見られています。
気候変動が加速させるゲリラ豪雨と線状降水帯のリスク
専門家は、気候変動の進行により、このような「ゲリラ豪雨」が今後さらに頻発すると警鐘を鳴らしています。慶尚南道山清などで年間降水量の半分に匹敵する豪雨が降ったように、被害が特定地域に集中する可能性が高いとの懸念が示されています。
ソウル大学地球環境科学部のソン・ソグ教授は、「1時間100ミリ以上の集中豪雨は、2022年のソウル豪雨以前までは珍しかったが、最近は頻度が増えている」と指摘します。教授はさらに、「気温が1度上がると、大気が保持できる水蒸気量は約7%ずつ増える。こうした気候変動が局地的な上昇気流の強化と重なり、豪雨リスクを高めている」と述べ、地球温暖化との関連性を強調しました。
啓明大学環境工学科のキム・へドン教授は、「特に忠清以南に降った雨は、気候変動による海水温上昇の影響が大きいと考える」と分析。その上で、「今後の夏季降水は今回のように狭く長い帯状の降水帯(線状降水帯)を形成し、極端な豪雨を降らせる傾向が強まるだろう」と予測しました。教授はまた、予測が難しい現状を考慮し、「気象庁の予報はより大胆にし、都市洪水に備えた地下貯水施設の拡充が必要だ」と具体的な対策を提言しています。
極端な気象が常態化する「新しい夏の天気」
ソン教授は、初夏に続いて真夏の猛暑も尋常ではないと見ています。「ソウルで猛暑が最も厳しかった2018年よりも、今年は早くから猛暑が始まっており、長期間続き、最高40度を超える可能性も高い」とし、「今後は非常に暑いか、豪雨が降るか、その中間がない極端な夏の天気が繰り返されるだろう」と、予測が難しい「新しい夏の天気」の到来を警告しています。
韓国気象庁の予報によると、雨雲が去り中部地方の梅雨も終了し、全国のほとんどの地域で最高体感温度33度前後の「蒸し暑い天気」が再び訪れる見込みです。暑く湿った気候の中で、一部の地域では最低気温25度以上の熱帯夜も予想されており、22日までは内陸各地で5~60ミリの強いにわか雨が降る見通しです。これらの気象情報からも、今年の夏が極端な気象現象に満ちたものになることが示唆されています。
参考文献
- 中央日報日本語版, 「初夏の猛暑から豪雨へ…韓国の異常気象、『ニューノーマル』に?」. (元の記事への参照)
- 韓国気象庁 (KMA) – 天気予報および気候関連発表
- ソウル大学地球環境科学部、啓明大学環境工学科 – 気象・気候変動関連研究発表