年金生活で「生活保護」検討?持ち家は手放す必要があるのか徹底解説

年金暮らしの親が生活保護を検討する際、「家を手放す必要は本当にあるのか」という不安は切実です。生活困窮者の「最低限度の生活」を保障する生活保護制度ですが、資産や特に持ち家の扱いについては誤解も少なくありません。本記事では、生活保護の制度概要、受給条件、そして最も懸念される持ち家の扱いについて詳しく解説します。

生活保護制度の概要と条件

生活保護は、日本国憲法に基づき、生活に困窮する国民の最低限度の生活を保障し、自立を助長する制度です。病気や高齢、失業、障がいなど、様々な理由で生活が立ち行かなくなった世帯が対象となります。受給は世帯単位で審査され、個人の状況だけでなく世帯全体の収入や資産が考慮されます。

生活保護を受けるための主な条件は以下の通りです。

1. 資産の活用と持ち家の特例

生活保護受給の原則は、預貯金、土地、建物、自動車、有価証券などの資産をまず生活費に充てることです。これは、資産があればそれを売却・活用して生活できると見なされるためです。

しかし、持ち家に関しては特例が設けられています。自宅が唯一の居住場所で、売却が困難、または売却額が少なくかえって生活が不安定になる場合など、一定条件を満たせば、持ち家を保有したまま生活保護を受給できる可能性があります。

特に高齢者の場合、住み慣れた家は生活の基盤であり、精神的安定に大きく影響します。福祉事務所は、主に以下の点を総合的に判断します。

  • 現在住んでいる自宅であること。
  • 資産価値が著しく高額でないこと。
  • 維持費(固定資産税、修繕費など)が生活保護費の範囲内でまかなえること。
  • 他に活用できる資産がないこと。

「必ず手放す」という一律のルールはなく、個別の状況に応じた柔軟な判断が重要となります。

年金暮らしの親が生活保護の申請を検討し、住み慣れた家を手放す必要性について悩む様子年金暮らしの親が生活保護の申請を検討し、住み慣れた家を手放す必要性について悩む様子

2. 働く能力と他制度の活用

病気、怪我、障がい、育児・介護などで働くことができない、あるいは働いていても収入が最低生活費に満たない場合に受給対象となります。働く能力がある場合は就労指導が行われ、能力に応じた就労が求められます。また、生活保護は「補足性の原則」に基づき、年金や傷病手当金、雇用保険の失業手当など、他の公的制度を最大限活用してもなお生活が困難な場合に適用されます。他の制度からの収入が最低生活費に満たない場合は、その不足分が補われます。

3. 親族による扶養の可能性

民法上の扶養義務者(配偶者、親、子、兄弟姉妹など)からの援助を受けられる場合は、それが優先されます。生活保護の申請があった際、福祉事務所は扶養義務者へ扶養の可否について照会を行うことがありますが、扶養が期待できない場合や、照会が申請者の生活を著しく困難にする恐れがある場合はこの限りではありません。

申請と相談の重要性

年金生活で生活保護を検討される方は、まずお住まいの地域を管轄する福祉事務所へ相談することが最も重要です。持ち家があっても、ご自身の状況(家の状態、維持費、家族構成など)を詳しく説明し、専門の相談員から具体的なアドバイスとサポートを受けることが肝要です。福祉事務所の担当者は、個別の状況に応じて必要な情報提供や手続きの支援を行ってくれます。

結論

年金暮らしの親が生活保護を検討する際、「持ち家を手放す必要があるのか」という懸念はつきものですが、本記事で解説したように、一定の条件のもとでは持ち家を保有しながら受給できるケースも存在します。生活保護は国民の権利であり、生活に困窮する方々が安心して暮らすための重要な制度です。不安や疑問がある場合は、一人で抱え込まず、ためらわずに地域の福祉事務所へ相談し、専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めします。

参考資料