人気受験漫画『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生が大学入試の深層を解説します。今回のテーマは、合否を左右する「採点基準」と、多くの受験生が見落としがちな復習の重要性。点数に一喜一憂するだけでなく、その背景にある採点の仕組みや「得点調整」の実態を理解し、自己採点を活用した効果的な学習法を身につけることが、合格への道を拓きます。
漫画『ドラゴン桜2』に登場する主人公の生徒たちが熱心に受験勉強に取り組む様子
模試の点数に一喜一憂する前に:見落としがちな復習の盲点
東京大学現役合格を目指す天野晃一郎と早瀬菜緒は、勉強合宿の終わりに共通テスト(旧センター試験)の過去問に挑戦し、前回よりも大幅に得点アップを果たしました。高得点を獲得した時の喜びはひとしおですが、実は「高すぎる点数」には注意が必要です。
模試の点数アップに喜び、涙を流す『ドラゴン桜2』の天野晃一郎と早瀬菜緒
筆者自身も中学受験時に塾講師からこんな問いかけをされたことを覚えています。「宿題をしないのと、宿題の丸つけをしないのは、どちらがより悪いと思うか」。講師は「宿題をしなければ、他の時間に使えるプラスマイナスゼロだ。しかし、丸つけを怠れば、内容が定着しないどころか、間違った知識を覚えてしまう危険性さえあり、かえってマイナスになる」と、当時小学校6年生だった私たちに丸つけの重要性を説きました。
この教訓は大学受験の模試にも当てはまります。多くの生徒は間違えた問題の復習に力を入れますが、「たまたま正解してしまった問題」はどうでしょうか。偶然の正解と間違えた問題の理解度は、本質的には変わりません。にもかかわらず、これらは見過ごされ、復習の機会を逃しがちです。真の学力向上には、自己採点と復習のタイミングが極めて重要となります。
自己採点で「採点基準」を掴む:「得点調整」と「下駄」の真実
多くの模試では試験終了と同時に模範解答が配布され、採点結果が返却されるのは2週間から2カ月後が一般的です。ここで肝心なのは、最も効果的な復習のタイミングは模試の「直後」だということです。採点結果を待たずに試験直後に自己採点を行うことで、全問題に対して「これは不正解ではないか」という疑いの目を持って自分の解答を厳しくチェックできます。さらに、自分で採点し、後日実際の採点結果と比較することで、大学入試における採点基準の感覚を養うことが可能になります。
この採点基準は、必ずしも厳格なものばかりとは限りません。特に大学受験の記述模試などでは、学生アルバイトが採点を行っているケースもあり、1点刻みでの採点であっても、プロの塾講師と比較して採点にムラが生じる可能性があることを認識しておくべきです。
また、入試本番では、受験生の実力とは直接関係なく点数が変動する「得点調整」という制度が存在します。共通テストや東京大学の入試では、理科などで選択科目間の不公平を是正するために、この得点調整、通称「下駄(げた)を履かせる」措置が取られることがあります。例えば、問題の難易度に差があり、物理の平均点が30点、生物の平均点が60点といった場合、物理選択者が不利にならないよう、得点分布を考慮して一定の点数が上乗せされるのです。直近では2023年の共通テストにおいて化学・物理・生物の間で得点調整が行われた実績がありますし、東京大学の入試でも「得点調整があったのではないか」という噂がたびたび飛び交います。「自己採点では3点だったのに、得点開示をしたら30点だった」という声も聞かれるほどです。
しかし、得点調整はあくまで相対的な評価を是正するものであり、決して「一発逆転のチャンス」ではありません。試験中に不安に襲われることもあるでしょうが、合格への唯一の道は、適切なタイミングで徹底的な復習を行い、着実に学力を高めていくことに尽きます。
土田淳真