去る7月20日の参院選で「日本人ファースト」を掲げ、著しい躍進を見せた参政党に対し、欧米メディアからは「ポピュリスト政党への急速な支持」「極右政党が台頭した」といった報道がなされている。ヨーロッパではフランスの「国民連合」などに代表される右派政党がすでに勢力を拡大しており、日本における今後の展開について、フランスの政治学者がその見解を語った。
欧州ポピュリズムとの類似性
フランス国立東洋言語文化学院で日本政治を専門とする政治学者のギブール・ドラモット教授は、今回の参政党の躍進について「ヨーロッパと非常に似ている」と指摘する。参院選期間中に日本に滞在していたドラモット教授は、その政治的な熱気を肌で感じたという。ヨーロッパでは近年、フランスの「国民連合」やドイツの「AfD(ドイツのための選択肢)」などが、経済不安や外国人排斥を主張することで支持を広げてきた。参政党もまた、物価上昇への不満や外国人政策を訴え、既存政党への不満票を取り込んだ点で共通性が見られる。
外国人政策に関して、ドラモット教授は、ヨーロッパの外国人比率が10~20パーセント程度であるのに対し、日本は約3パーセントと低い水準にあることを指摘しつつも、近年の居住者急増や訪日観光客の増加により「ルールを守らない外国人」への不満が高まった可能性を示唆している。ただし、ヨーロッパのポピュリスト政党は人気を集めながらも、詳しい政策は語らない傾向にあり、また極端な政策を掲げた後に主張を後退させることが少なくなかったという。参政党の実力が真に明らかになるのは、今後の国会での議論の場であると見られている。
日本政治を研究するギブール・ドラモット教授
世界の不安定化と日本政治の展望
「自国ファースト」を掲げるポピュリスト政党が各国で台頭し、「世界は不安定な状況になった」とドラモット教授は警鐘を鳴らす。フランス議会は現在、左派・中道派・右派という相容れない三つの勢力に大きく分断されており、政権が不安定で大胆な政策を打ち出せない状況が続いている。他の欧州諸国でも同様の状況が見られるという。
一方でドラモット教授は、日本においては、自民党と公明党が過半数を確保していないものの、国民民主党や日本維新の会とは協力関係の構築が可能であると分析しており、ヨーロッパのように深刻な政治的分断が進む可能性は低いと見ている。今後の日本の政治安定化を左右する重要なポイントとして、与野党間がどれだけ建設的に歩み寄り、協調体制を構築できるかが挙げられる。
今回の参政党の躍進は、有権者の既存政党への不満や、経済、外国人政策といった具体的な課題への懸念を浮き彫りにした。しかし、その真価が問われるのは、国会における具体的な政策提案と、与野党間の協力体制構築にかかっていると言えるだろう。日本政治が、欧州のような深刻な分断を回避し、安定した運営を続けられるか、今後の動向が注目される。
出典:Yahoo!ニュース(引用元:日本テレビ系(NNN))