ヒグマ襲撃で死亡:新聞配達員が感じた「予兆」と加害クマの「過去」

北海道福島町で7月12日に発生した痛ましいヒグマ襲撃事件で、新聞配達員の佐藤研樹さんが命を落としました。この悲劇を巡り、佐藤さんが生前、頻繁にヒグマと遭遇し、その身に危険が迫っていると感じていたという新事実が判明しました。さらに驚くべきことに、佐藤さんを襲ったクマは4年前にも人を襲っていた「前歴」があることが明らかになり、地域社会に改めて衝撃が走っています。

頻繁な遭遇と募る恐怖:被害者が抱えていた「予兆」

佐藤さんをよく知る人物の証言によると、「仕事に行くときにクマを目撃して怖いという話を3回ぐらい聞いた。目をつけられていたのか」と、佐藤さんがヒグマに対する強い恐怖を抱いていたことが伺えます。特に、襲撃される4日ほど前から頻繁にクマと遭遇し、自身の身に危険を感じていたとのことです。事件前日には母親に対し「ナイフ持って行った方がいいかな?」と話していたともいいます。几帳面な性格だった佐藤さんは、クマへの恐怖と同時に、新聞を配達するという強い責任感から、恐怖を感じながらも仕事を続けていたようです。

母親の深い悲しみと無念

息子を失った佐藤さんの母親は、この悲劇についてUHBの取材に応じ、胸の内を語りました。「新聞配達の仕事の時間を遅らせてもよかったのではないか。痛くて、苦しかったと思う。かわいそうでならない」と、愛する息子を襲った理不尽な運命と、その最期の苦しみを案じる深い悲しみと無念さを滲ませました。

驚愕の事実:加害ヒグマの「前歴」とDNAの一致

佐藤さんを襲ったヒグマは、事件から6日後の18日未明にハンターによって駆除されました。しかし、その後の調査でこのクマに恐ろしい前歴があることが判明しました。なんと4年前にも人を襲い、死に至らしめていたのです。小町麻紀カメラマンの報告によれば、2021年7月に福島町で77歳の女性がクマに襲われ死亡する事件が発生。当時、町民の間には「草やぶがだんだん増えてきて、クマのテリトリーが徐々に人間に近づいている」といった衝撃が広がっていました。今回のDNA鑑定の結果、佐藤さんを襲い死亡させたクマと、2021年の事件を起こしたクマのDNA型が完全に一致したことが確認され、同じ個体による再犯であることが明らかになりました。

北海道福島町で頻繁に目撃されるヒグマの足跡と警戒を示す看板北海道福島町で頻繁に目撃されるヒグマの足跡と警戒を示す看板

なぜ再犯したのか?専門家が語るヒグマの行動心理

なぜ4年もの空白期間を経て、再び人を襲う事態に至ったのでしょうか。「OSO18」特別対策班のリーダーを務めた南知床・ヒグマ情報センターの藤本靖さんは、その行動心理について解説しました。「クマの方が強いと思ってしまうと、同じような襲撃を繰り返す傾向は強い」と指摘。今回の4年間の空白については、「たまたま機会がなくて大事に至らなかっただけ」という見解を示し、一度でも人間を襲って成功体験を得たクマは、同様の行動を繰り返す危険性が高いことを示唆しました。福島町に出されていた「ヒグマ警報」は解除されましたが、野生動物との共存における人間の警戒は今後も続く必要があります。

本件は、日常の中に潜む野生動物との予期せぬ遭遇の危険性、そして過去の経験が動物の行動に与える影響の重要性を改めて浮き彫りにしました。地域の安全対策と住民一人ひとりの危機意識の向上が、今後も求められる課題です。

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