「反ユダヤ主義」論争に発展:ブエリング航空 ユダヤ系少年降機事件の波紋

スペインの格安航空会社ブエリングで発生した、フランス系ユダヤ人の少年たちを飛行機から降ろすという事件が、現在、深刻な反ユダヤ主義の論争へと拡大し、国際的な注目を集めています。この出来事は、航空会社の安全性への主張と、人種的・宗教的差別への非難が衝突する複雑な問題として浮上しています。

事件の経緯と「反ユダヤ主義」の指摘

2022年7月24日、スペインでのサマーキャンプを終えた47人のフランス系ユダヤ人少年と4人の引率者が、パリ行きのブエリング航空機から強制的に降機させられる事件が発生しました。現場映像には、引率者の一人がスペイン警察に拘束され、手錠をかけられる様子も映っており、事件の異例性が浮き彫りになりました。

ブエリング航空のエアバスA320機。2022年にフランス系ユダヤ人少年たちが降機させられた事件で、反ユダヤ主義論争の渦中にあるスペインの格安航空会社の機体。ブエリング航空のエアバスA320機。2022年にフランス系ユダヤ人少年たちが降機させられた事件で、反ユダヤ主義論争の渦中にあるスペインの格安航空会社の機体。

イスラエルのディアスポラ担当大臣アミカイ・チクリ氏は、X(旧Twitter)で、10歳から15歳の少年たちが機内でヘブライ語の歌を歌っていた際に、乗務員から「テロ国家イスラエル」と呼び降機を命じられたと主張。「これは最近の反ユダヤ主義事件の中でも最も深刻なものの一つ」と強く批判しました。少年の一人の母親も、ヘブライ語の歌が原因で警察が介入し、全員が飛行機から降機させられたと証言し、警察が携帯電話の使用を禁じ、女性引率者には物理的な力を加えたと訴えました。

航空会社と警察の反論:安全確保と秩序維持

これに対し、ブエリング航空は声明で、少年乗客たちが機内で「対立的な態度」を示し、飛行手続きを妨害、乗務員の指示を繰り返し無視したと反論。「非常用設備を不適切に操作し、必須の安全デモンストレーションを妨害した」点を特に重大視し、降機の決定は「宗教的な表現とは関係なく、あくまで搭乗客の安全を守るための措置」だったと説明しています。ブエリング航空は宗教的信念を完全に尊重するとしつつ、降機後も一部の少年が「攻撃的行動」を続けたため、引率者が当局に制止されたと述べました。

スペイン警察も声明を発表し、乗客が非常用設備を繰り返し操作し、乗務員の案内を妨害した事実を確認しました。機長がこれを「飛行安全への脅威」と判断し、降機を要請したと説明しています。手錠をかけられた女性引率者については、「警察の命令に従わなかったため制止したもので、逮捕されたわけではない」と釈明しました。この事件により、当該便の出発は2時間以上遅延しました。

結論:深まる対立と国際社会への問い

このブエリング航空におけるユダヤ系少年降機事件は、単なる機内トラブルを超え、「反ユダヤ主義」という深刻な論争の焦点となっています。航空会社と警察は安全確保のための措置と強調する一方、少年側は宗教的・民族的差別であると強く非難しており、双方の主張は対立したままです。本件は、国際社会における多様性の尊重と、航空会社の安全対策の適切なバランスについて、重要な問いを投げかけています。

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