「石破首相、退陣へ 8月末までに表明 参院選総括踏まえ」――。毎日新聞が7月23日午前、インターネット上で“スクープ”を報じ、同日午後には読売新聞が東京と大阪で「石破首相 退陣へ」と題した号外を配布しました。しかし、そのわずか4時間後、石破茂首相自らがこの報道を明確に否定。「一部にはそのような報道がございますが、私はそのような発言をしたことはございません」と述べました。一連の退陣報道の裏側で一体何が起きていたのでしょうか。今回の事態は、4年前の夏の出来事を想起させます。
参院選結果と党内からの退陣要求
今回の退陣報道を理解するためには、7月20日に投開票された参議院選挙の結果と、その後の自民党内の動きを振り返る必要があります。今回の参院選で自民党と公明党が獲得した議席は47にとどまり、石破首相が勝敗ラインとしていた「非改選を含めて自公で過半数」となるための50議席には届きませんでした。
翌21日、石破首相は続投を表明しましたが、これに対し党内からは反発の声が続出しました。高知県支部連合会(県連)は同日、党本部へ早期退陣の申し入れを行うことを決定。さらに22日に新潟県連が開いた党議では、石破首相は退陣すべきだとの意見が噴出しました。また、佐藤勉元総務相や古川禎久元法務相、斎藤健前経済産業相、萩生田光一元経産相、御法川信英元財務副大臣といった党内の有力者が集まり、「野党に政権を明け渡すべき」と合意。佐藤氏が森山裕幹事長に直接申し入れを行いました。これらの動きは、参院選の敗北が党内の不満を増幅させたことを示しています。
世論調査が示す内閣支持率の急落
このような党内の動きと並行して、世論調査の結果も石破内閣にとって厳しい状況を突きつけていました。読売新聞とNNN(日本ニュースネットワーク)が7月21日と22日に実施した共同世論調査では、石破内閣の支持率は前月から10ポイントも下落し、22%と内閣発足以来最低を記録しました。一方、不支持率は同14ポイント上昇し67%に達しています。「辞任すべき」との意見は過半数を超える54%にまで上り、国民の不満が高まっている現状が浮き彫りとなりました。これらの数字は、メディアによる退陣報道の背景に、首相に対する世論の厳しい評価があったことを示唆しています。
「石破首相 退陣へ」と報じる読売新聞の号外を手にする人物。首相の報道否定後、その背景が注目される政局の動きを示唆。
4年前の「菅降ろし」報道との類似点
今回の「石破首相退陣報道」を巡る一連の事態は、ある種の既視感を伴うものです。それは今から約4年前、2021年8月31日夜に毎日新聞が配信し、“菅降ろし”のきっかけとなった「首相、9月中旬解散意向 党役員人事・内閣改造後」というインターネット記事です。この報道も、当時の菅首相(当時)の進退に大きな影響を与え、その後の政局を動かす要因となりました。今回の石破首相の事例も、参院選後の政局の混乱とメディアの報道が交錯する中で、今後の日本の政治動向に注目が集まる状況と言えるでしょう。
結論
今回の石破首相を巡る「退陣報道」とそれに続く首相自身の否定は、参議院選挙の結果がもたらした政局の不安定さ、自民党内の動揺、そして国民の間の内閣への不満が複雑に絡み合っていることを明確に示しました。特に、内閣支持率の急落や、党内からの退陣要求が噴出している状況は、今後の政権運営にとって極めて厳しい課題を突きつけています。メディアの報道がどのように政局に影響を与えるか、また、首相がこの難局をどのように乗り越えるのか、今後の日本の政治情勢から目が離せません。
参考文献
- Yahoo!ニュース (2024年7月24日). 石破首相「退陣」スクープ、4時間後に本人否定…裏側で何が起きたのか. Source link