韓国ソウルの旧在韓日本大使館前に設置された「平和の少女像」前で長期間にわたり座り込みを行っていた進歩系市民団体が撤収した後、その空白の場所を日本軍慰安婦被害は虚偽であると主張する極右団体が占拠し、新たな波紋を広げています。これは、歴史認識を巡る日韓間の複雑な対立が、ソウルの中心部で新たな様相を呈していることを示しています。
「少女像」周辺で繰り広げられる異なる主張の集会
23日正午、ソウル市鍾路区の旧在韓日本大使館前にある「平和の少女像」周辺では、進歩系市民団体「正義記憶連帯(正義連)」による第1710回定例水曜集会と、極右団体「慰安婦法廃止国民行動」による水曜集会への反対集会が同時に開催されました。
極右団体である「慰安婦法廃止国民行動」や「国民啓蒙運動本部」、「反日銅像真実糾明共同対策委員会」などは、少女像の両脇に日章旗を掲げながら集会を行い、「少女像も慰安婦も国民に対する詐欺だ」と書かれたプラカードを掲げて彼らの主張を展開しました。これらの集会には、警察の非公式推定で約10人余りが参加したとされています。
ソウル旧日本大使館前の少女像付近で、日章旗を掲げる極右団体の集会
極右団体が占拠した座り込み場所の背景
今回、極右団体が新たに集会を行った場所は、2015年12月以降、別の市民団体「反日行動」が朴槿恵政権による日韓慰安婦合意に反発し、野宿での座り込みを継続してきた場所でした。「反日行動」は最近、代表が国家保安法違反の容疑で逮捕・取り調べを受け、その後釈放されるなど、捜査が続いていることに反発し、今月19日に少女像前での座り込みを中止していました。その撤収後に、極右団体がこの場所を占拠することになったものです。
正義連の批判と人権委の勧告
一方、正義連は、少女像から約150メートル離れた場所でこの日の水曜集会を開催しました。警察の非公式推定によると、正義連の水曜集会には約100人が参加しました。正義連の李娜栄理事長は、「2019年から水曜集会を妨害し、日本軍慰安婦被害を否定して、被害者と水曜集会の参加者たちを侮辱し攻撃してきた者たちの妄動は終わる気配がない」と述べ、極右団体の行為を強く批判しました。また、「今日もあちらでは日章旗を振りながら極右の集会が行われている」と指摘しました。
これに先立ち、国家人権委員会の侵害救済第2小委員会は今年4月、ソウル鍾路警察署長に対し、保守団体による水曜集会への反対集会などにおいて、警察が積極的に介入するよう勧告を出しています。人権委員会は決定文の中で、「水曜集会に反対する集会側が過度なスピーカー音量などで集会を妨害したり、日本軍慰安婦被害者に対する名誉毀損や侮辱が発生しないよう、現場で中止を勧告または警告するように」と明記し、適切な対応を求めていました。
歴史認識を巡る日韓の対立の継続
ソウルの旧日本大使館前で続くこれらの集会は、日本軍慰安婦問題という歴史認識を巡る日韓間の根深い対立が、依然として解決の糸口を見いだせない現状を浮き彫りにしています。市民社会の動きが、両国の関係に今後どのような影響を与えるのか、引き続き注視が必要です。