メキシコの主要空港で、旅客機同士が衝突寸前となる極めて危険なニアミスが発生しました。着陸を試みていたアエロメヒコ・コネクトの旅客機が、滑走路で離陸準備中のデルタ航空機の上空をわずかな差で通過し、同じ滑走路に着陸するという事態が生じました。この緊迫した状況は、航空交通管制のあり方とその安全性に大きな疑問を投げかけています。
メキシコシティ国際空港での緊迫の状況
この航空機ニアミスは、現地時間21日午前7時30分ごろ、メキシコシティのベニート・フアレス国際空港で発生しました。米国アトランタへ向かう予定だったデルタ航空のボーイング737型機DL590便(乗客144人搭乗)が滑走路で離陸準備を進めている最中、同空港に到着したアエロメヒコ・コネクトのAM1631便が、デルタ航空機の直上をかすめるように降下し、同一の滑走路に着陸したのです。航空機追跡ウェブサイト「Flight24」のデータによると、アエロメヒコ機はデルタ航空機の上空わずか200フィート(約60メートル)を通過した後、その前方に無事着陸したと記録されています。
メキシコシティ国際空港での航空機運航の様子を示す資料写真
デルタ航空パイロットの反応と離陸中止
間一髪で衝突を免れたものの、この予期せぬ事態にデルタ航空のパイロットは即座に離陸を中止し、ターミナルへと引き返しました。結果として、DL590便の離陸は予定よりも3時間遅れることとなりました。空港の航空交通管制の録音記録には、デルタ航空のパイロットが「滑走路で待機中」と伝えた後、「ワオ」という驚きの声や、スペイン語で「信じられない」といった反応が残されており、当時の緊迫した状況を物語っています。
ニアミスの原因と当局の対応
元パイロットであるスティーブ・ガニャード氏はABC放送に対し、今回のニアミスについて「管制塔の管制官が、離陸許可と同時に着陸許可を出したか、または着陸機に対して明確な滑走路の指示を出さなかった可能性がある」と述べ、航空管制官の誤った指示が原因である可能性を示唆しました。デルタ航空は、この件をメキシコ航空当局、米国連邦航空局(FAA)、米国家運輸安全委員会(NTSB)に報告済みであり、調査には全面的に協力するとしています。また、アエロメヒコ・コネクトの親会社であるアエロメヒコも声明を発表し、当局と緊密に連携し、事故調査に協力する意向を示しました。
メキシコ航空当局の安全性評価の背景
メキシコ航空当局は、今回のニアミスに関して今のところコメントを出していません。メキシコは2021年に米国の航空当局による安全性評価で国際最低基準を満たしていないと判断され、航空安全等級がカテゴリーIIに格下げされていました。しかし、その後の改善努力が実を結び、2023年9月にはカテゴリーIに再格上げされたばかりでした。今回のニアミスは、再格上げ後のメキシコの航空安全体制が再び問われる事態となる可能性があります。
今回のニアミスは、一歩間違えれば大惨事につながる危険性をはらんでおり、航空交通管制システムの厳格な運用と、管制官の的確な判断の重要性を改めて浮き彫りにしました。関係当局による徹底した調査が進められ、再発防止に向けた具体的な対策が講じられることが強く求められています。
参考文献
- CNN
- Flight24
- ABC放送
- Yahoo!ニュース / JoongAng Ilbo Japanese