船上で海を眺めながらいただく食事は、なぜこれほど心に残るのでしょうか。日本のフェリーは近年、単なる移動手段から「旅そのもの」を楽しむ空間へと進化。その魅力の中心にあるのが、他では味わえないフェリーグルメです。長距離航路の本格的なバイキングから、生活航路の手軽な一品、そしてユニークな自販機グルメまで。海の上でしか体験できない、奥深い食の世界を巡りましょう。
快適な船内空間と美食体験
かつてのフェリーのイメージは大きく変わり、個室やプライベート空間が充実。しかし、魅力はそれだけではありません。旅の満足度を高めるのが、船上の「グルメ」です。数百キロを航行する大型フェリーには陸上レストラン並みの本格厨房があり、熟練シェフが波に揺られながら腕を振るいます。揚げたて、焼きたてのフルコースや定番料理が提供され、季節ごとのメニュー入れ替えも魅力です。
名古屋港の絶景を背景に名港大橋をくぐる太平洋フェリー。快適な船旅の始まりを予感させる壮大な光景。
多彩なバイキング:有名フェリーの食の競演
特に大型フェリーのバイキングは圧巻です。大阪〜別府間の「さんふらわあ くれない・むらさき」の「瀬戸内ビュッフェ」では、名物の手ごねハンバーグや神戸牛ボロネーゼなど、常時30種類以上が並び、地上のバイキングと遜色ありません。
約40時間かけて苫小牧〜仙台〜名古屋を結ぶ「太平洋フェリー」では、船や時間帯で異なるバイキングを楽しめます。夕食には切りたてのローストビーフや「仙台マーボ焼きそば」などご当地料理が登場し、朝・昼・夜それぞれ充実。長時間の船旅でも飽きさせない工夫が凝らされています。
船旅の記憶を彩る「おもてなし」の食
フェリーの食事が充実している最大の理由は、その品揃えの多様さにあります。二日間近い乗船時間で最大5食利用しても、飽きさせない工夫。これは、乗客に心から船旅を楽しんでもらいたいという、各社の「おもてなし」の心が反映された結果です。ある料理長は、「夏休みの子ども向けメニューには特に力を入れています。思い出に残る船旅を提供できるよう、他社には負けません」と語ります。実際にこの時期は、チョコフォンデュやケーキ作り、お祭り屋台のような特設コーナーが設けられ、レストランは子どもたちの歓声で賑わいます。フェリーでの食事は、単なる腹ごしらえではなく、旅の重要な一部となっているのです。
日本のフェリーは今や、単なる移動手段に留まらず、「食」そのものが旅の大きな魅力となっています。陸上にも劣らない本格的なバイキングから、地域の味覚、そして家族全員が笑顔になる工夫されたメニューまで、その多様性には目を見張るものがあります。海の上でしか体験できない特別な食の時間は、船旅を一層豊かにし、忘れがたい思い出となるでしょう。次回の旅行では、ぜひフェリーを選び、進化し続ける船内グルメを心ゆくまで堪能してみてはいかがでしょうか。
参考文献:Yahoo!ニュース – 東洋経済オンライン「フェリーの飯はなぜあんなにうまい?実は「揺れる厨房」でシェフが腕振るう…大型フェリーで楽しめる「バイキング」の中身」