玉城デニー沖縄県知事が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国海警局による活動の活発化に対し、県として中国側に抗議しない考えを示しました。これは、過去に在沖縄米兵による性的暴行事件が発生した際に、知事が米政府に直接抗議した対応とは異なる姿勢であり、その背景にある認識が注目されています。
尖閣諸島周辺の緊迫化と知事の姿勢
尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では、中国海警局の船の航行が242日連続で確認され、過去最長の連続日数を更新しています。また、今年3月には中国公船による領海内への連続滞在時間が92時間超に及び、平成24年9月の尖閣国有化以降で最長を記録。さらに、76ミリ機関砲を搭載した船舶の航行も常態化しており、沖縄県の行政区域である尖閣周辺において、中国側が「力による一方的な現状変更」を試みる動きが先鋭化しています。
定例記者会見で、この問題に関する中国側への抗議の有無を問われた玉城知事は、「尖閣を含む国境に関する問題については一義的には国において対処、対応されるものと認識している」と述べ、県として中国側に直接抗議はしない考えを明確にしました。
那覇市での定例記者会見で発言する玉城デニー沖縄県知事
在沖縄米兵事件への直接抗議とその理由
一方で、県内で相次いで発生した在沖縄米兵による性的暴行事件に対しては、玉城知事は過去に米政府側へ直接抗議を行っていました。
会見において、玉城知事はこの異なる対応について言及し、「日米の同盟関係において基地を提供している日本政府、あるいは基地を使用している米側双方に責任があるとの認識の上から、われわれは正当に米側に対し抗議、要請を行っている」と説明しました。これは、米軍基地の問題は日米双方の責任が伴うため、県としても直接的に当事者である米側に働きかけるべきであるという認識に基づいていることを示唆しています。
二つの問題における対応の違い
玉城知事の尖閣問題と在沖縄米兵事件への対応の違いは、それぞれの問題に対する責任の所在という認識に根差していると考えられます。尖閣諸島は日本の領土であり、その国境管理は国の専管事項であるという立場に対し、米軍基地に関する問題は、県民の生活や安全に直結し、日米地位協定の下での日米間の取り決めが深く関わるため、県も当事者として直接働きかける必要がある、という判断が伺えます。
この異なる対応は、沖縄県が抱える複雑な地政学的課題と、基地負担という特別な状況の中で、県知事が国家と地方、そして国際関係の狭間で直面する難しい判断を浮き彫りにしています。
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/7af13ac13dce21b4eb54e950df199a08a378ac19