米国では、新生児の姿を極めて精巧に再現した「リアルな赤ちゃん人形」、通称「リボーンドール」が大きな注目を集めています。そのあまりのリアルさから、精神的な癒し効果があるとして高く評価される一方で、一部からは不快感や不気味さを感じるという意見も少なくありません。この現象は、現代社会における心のケアのあり方や、倫理的な議論を提起しています。
本物の新生児のように精巧に作られたリボーンドール
精巧な作りが生み出す「本物」のような存在感
リボーンドールは、専門の職人によって手作業で製作されます。その価格は一体あたり8000ドル(約110万円)にも達することがあり、その精巧さは驚くほどです。シリコン製の肌には薄い青色の血管が表現され、新生児特有の産毛の感触を再現するために、ヤギやアルパカの毛が一本一本丁寧に植え付けられます。外見だけでなく、本物の赤ちゃんに近い重さや肌触りも再現されており、抱きかかえた際には生身の赤ちゃんを抱いているかのような感覚を覚えるといいます。
精神的ケアとしてのリボーンドール
リボーンドールを収集する人々は、これらの人形がメンタルヘルスの回復に大きく貢献すると主張しています。特に、事故で子どもを亡くした人や流産を経験した人、さらには心的外傷後ストレス障害(PTSD)、アルツハイマー病、認知症、自閉症などを抱える人々に対して、感情的な癒しを提供できるとされています。実際に、米ポップスターのブリトニー・スピアーズも流産経験を公表後、リボーンドールを抱いている姿が目撃されたことがあります。
公共の場での「不気味さ」と規制の動き
一方で、リボーンドールのあまりにリアルすぎる外見は、一部の人々に強い不快感や「不気味さ」を感じさせています。公共の場に持ち出された際、本物の赤ちゃんか人形かの区別がつきにくいことから、周囲を驚かせたり、不安にさせたりするケースも報告されています。このような社会的な反応を受け、最近ではブラジルで、リアルな赤ちゃん人形を公共の場に持ち込むことを禁止する法案が提出されるなど、その利用を巡る倫理的・社会的な議論が活発化しています。
結論
リボーンドールは、その精巧な作りから「癒し」をもたらす存在として受け入れられる一方で、「不気味さ」という感情的な側面や、公共の場でのあり方といった倫理的な課題も内包しています。この現象は、人間とモノとの関係性、そして精神的な充足を求める現代社会の多様なニーズを浮き彫りにしています。今後も、リボーンドールが社会にどのような影響を与え、どのような議論を巻き起こしていくのか、その動向が注目されます。
参考文献
- Wall Street Journal (ウォール・ストリート・ジャーナル)
- Yahoo!ニュース (ニュースサイト)
- 中央日報日本語版 (ニュースサイト)