トランプ氏とエプスタイン氏巡るAI生成偽コンテンツ、数百万回再生で拡散

近年、人工知能(AI)技術の進化は目覚ましく、その恩恵は多岐にわたる一方で、真偽を見分けるのが困難な偽情報、いわゆる「ディープフェイク」の拡散という深刻な課題も生み出しています。特にソーシャルメディア上では、ドナルド・トランプ前米大統領と性的搾取目的の人身取引などの罪で起訴され勾留中に死亡した故ジェフリー・エプスタイン元被告に関するAI生成の偽画像や動画が急速に広まり、世界中で大きな注目を集めています。これらの偽コンテンツは、両氏が未成年の少女たちと不適切な交流をしているかのような印象を与え、数百万回もの閲覧・再生回数を記録しています。本記事では、その爆発的な拡散状況と具体的な内容、そして独立した専門機関による真偽の検証結果について詳述し、フェイクニュースがもたらす現代社会の課題を浮き彫りにします。

爆発的に拡散するAI生成偽コンテンツの実態

ドナルド・トランプ氏とジェフリー・エプスタイン氏を巡るAI生成の偽コンテンツは、その衝撃的な内容からソーシャルメディア上で瞬く間に広まりました。拡散されている偽動画の一つには、両氏がダンスをする幼い少女たちをいやらしい目で見ている場面が映し出され、英バンド、シャーデーの楽曲「Is it a Crime?(罪なのかな?)」がBGMとして使用されています。

2025年7月25日に撮影されたドナルド・トランプ前米大統領のポートレート。本記事はAI生成された偽コンテンツの拡散に関するものです。2025年7月25日に撮影されたドナルド・トランプ前米大統領のポートレート。本記事はAI生成された偽コンテンツの拡散に関するものです。

さらに、少なくとも2枚の偽写真では、トランプ氏とエプスタイン氏が未成年の少女たちと一緒にソファに座っている場面が描かれています。また、別の偽写真とされるものには、トランプ氏がエプスタイン元被告が所有するカリブ海の島で10代の少女とダンスをしている場面が捉えられており、「撮影時、トランプ氏は50代だった。どんな男がそんなことをするのか?」というキャプションが重ねて表示され、視聴者の感情を煽っています。

偽情報監視団体「ニュースガード(NewsGuard)」の調査によると、これらのAIによって捏造された少なくとも7枚の偽画像と1本の偽動画は、ソーシャルメディアプラットフォーム全体で累計720万回以上閲覧・再生されたと控えめに見積もられています。同団体は、HiveやIdentifAIといった複数のAI検出ツールを用いてこれらのコンテンツがAIによって生成されたものであることを確認しました。実際の閲覧・再生回数は、エンゲージメントの高い投稿の手動集計値よりもはるかに多い可能性が高いと指摘されています。

エプスタイン氏との過去の関係と本物の情報

ドナルド・トランプ氏とジェフリー・エプスタイン氏の間には、確かに過去に深い関係がありました。両氏は約15年間にわたり友人として付き合い、不動産取引を巡って仲たがいする2004年までは、共にいるところがしばしば写真にも撮られていました。トランプ氏は現在、エプスタイン氏との距離を置こうとしていますが、過去の関係は広く知られています。

しかし、ニュースガードの調査によると、トランプ氏とエプスタイン氏が未成年の少女たちと一緒に写っているとされる写真や、トランプ氏がエプスタイン元被告が所有する「エプスタイン島」(リトル・セント・ジェームズ島)を訪れているとされる写真については、現時点では本物の存在は確認されていないとされています。今回拡散している画像や動画は、AI技術を悪用して巧妙に捏造されたものであり、事実とは異なる情報が基になっています。

フェイクニュースがもたらす影響と社会の課題

AI生成の偽コンテンツが世界中で氾濫する現状は、情報操作や世論形成への深刻な影響を示唆しています。特に政治や社会問題に関するフェイクニュースは、人々の認識を歪め、不必要な混乱や不信感を生み出す可能性があります。今回の事例は、AI技術の悪用が、個人の名誉毀損にとどまらず、社会全体の情報環境の健全性を脅かすものであることを改めて浮き彫りにしました。

ソーシャルメディアプラットフォームには、このような偽コンテンツの拡散を阻止し、真実を保護するための責任が強く求められています。同時に、情報を受け取る私たち一人ひとりが、情報の真偽を見極めるためのリテラシーを高めることが不可欠です。

結論

ドナルド・トランプ前米大統領と故ジェフリー・エプスタイン元被告に関するAI生成の偽コンテンツの拡散は、現代社会における情報技術の光と影を象徴する出来事です。高度なAI技術によって生み出されたこれらの偽画像や動画は、数百万回もの再生を記録し、人々の間に誤った認識を広める危険性を持っています。

本件は、インターネット上の情報に接する際に、常に批判的な視点を持つことの重要性を私たちに教えています。信頼できる情報源からの裏付けを取る習慣を身につけ、AIによって生成されたコンテンツの識別能力を高めることが、健全な情報社会を維持していく上で不可欠となります。日本に住む私たちも、世界的な情報環境の課題として、この問題に継続的に関心を持つべきでしょう。

参考文献

  • AFPBB News. (2025年7月25日). 「トランプ氏とエプスタイン氏のAI偽造写真・動画が拡散、研究者が警告」. https://news.yahoo.co.jp/articles/827a26403299dc1329f0e48e699a99048ba7caca
  • NewsGuard. (関連するニュースガードの報告書に基づくと推測される。具体的な報告書名やURLは本記事の元の情報には含まれないため、一般的な言及に留める。)