埼玉県、トルコ人ビザ免除協定の一時停止を要請:在日クルド人問題と治安悪化への政府対応

埼玉県の大野元裕知事が、トルコ国籍者に対する短期滞在査証(ビザ)免除協定の一時停止を外務省に要請した件で、日本における外国人受け入れ問題が改めて注目されています。特に埼玉県内では、在日クルド人との共生を巡る治安悪化が深刻な社会問題となっており、県民の間で不安の声が高まっています。この問題提起は、外国人政策、出入国管理、そして地域社会の安全保障に関わる重要な議論を巻き起こしています。

埼玉県における外国人共生と治安悪化の現状

川口市・蕨市での深刻な社会問題

埼玉県川口市や蕨市では、トルコ国籍の在日クルド人コミュニティとの関係において、治安悪化が問題視されています。地域住民からは、日常生活における不安や懸念が多数寄せられており、この状況は単なる地域問題に留まらず、日本全体の外国人受け入れ制度の課題を浮き彫りにしています。報道番組でも市民の具体的な不安が紹介され、問題の根深さが浮き彫りになりました。

県の対応と解決の困難さ

大野知事によると、令和5年以降、多くの県民から治安に関する不安の声が寄せられるようになり、埼玉県はこれに対し、警察官の増員や川口北警察署の22年ぶりの新設予算計上、さらには「わがまち防衛隊」といった地域防犯組織の拡充など、可能な限りの対策を講じてきました。しかし、知事は「これだけやっても、なお難しい」と述べ、現状では問題解決には至っていないことを率直に認めています。これは、自治体の努力だけでは対応しきれない、より広範な課題が存在することを示唆しています。

埼玉県知事、大野元裕氏が外国人政策に関する問題提起を行う(2025年6月撮影)埼玉県知事、大野元裕氏が外国人政策に関する問題提起を行う(2025年6月撮影)

難民申請と「特定活動」制度の課題

トルコ国籍者の特異性と制度の抜け穴

大野知事は、蕨市や戸田市に在住するトルコ国籍者の多くが、難民申請を繰り返す外国人であると指摘しています。特に、埼玉県内のトルコ人の半数以上が「特定活動」という在留資格を持つ人々であり、その多くが難民申請中の身分であると説明しました。他の県では見られないこの特異な状況が、埼玉県における治安問題の背景にあるとの見解を示しています。これは、現行の難民申請制度が、入国を維持するための手段として利用されている可能性を示唆するものです。

政府への改善要請と実効性の欠如

この問題に対し、大野知事は、今年5月に関東地方自治会からも法務省へ改善の申し入れがあったことを明かしました。しかし、知事は「なかなか改善されない」「実際の問題として減っていない」と述べ、政府による対策が現状では十分な効果を発揮していないことを訴えました。この発言は、地方自治体が直面する問題に対し、国レベルでの抜本的な制度改革と実効性のある対応が喫緊の課題であることを強く示唆しています。

ビザ免除の一時停止要請の真意

他国籍者との公平性を求める

大野知事がトルコ人に対するビザ免除協定の一時停止を求めた真意は、トルコ人だけを特別にターゲットにしているわけではないと説明しました。むしろ、トルコ国籍者が優遇されている現状を是正し、他の国籍者と同じように査証の取得を義務付けることで、公平な入国管理体制を確立したいという意図があることを強調しています。これは、特定の国籍者を優遇する現状が、結果的に日本の出入国管理に歪みを生じさせているという認識に基づいています。

入国時のスクリーニング強化の必要性

現在の制度では、トルコ人はビザなしで入国できるため、入国前の段階での審査(スクリーニング)が行われません。知事は、ビザ申請を義務化すれば、一度本省で申請内容を審査し、日本への入国の可否を判断するスクリーニングが可能になると主張しています。難民申請を前提とした入国が繰り返される現状に対し、入国前の段階で適切な審査を行うことが、治安維持と制度の健全性にとって不可欠であると訴えました。

政府の対応策:法務大臣の「不法滞在ゼロプラン」とJESTA導入

鈴木法相による出入国管理強化の言及

大野知事の訴えに対し、番組に共演した鈴木馨祐法務大臣は、「適切に出入国在留管理をやっていくことは、国民の皆さんの安全安心を守るために、絶対必要なこと」と述べ、出入国管理の強化が国民の安全に直結する重要な課題であることを認めました。これは、地方自治体の懸念に対し、政府としても問題意識を共有していることを示唆するものです。

JESTA導入による事前審査の可能性

鈴木法相は、法務省が2028年度中の導入を目指している「JESTA(電子渡航認証制度)」に言及しました。JESTAが導入されれば、査証が免除されている国籍者であっても、事実上の事前審査が可能になり、入国前の段階で問題のある人物を「かなりストップをかけることができるようになる」と説明しました。これは、大野知事が求めていた入国前スクリーニングの強化に繋がる具体的な解決策として期待されます。しかし、その導入までにはまだ2年以上の期間があり、それまでの間の対応が課題となります。

入管法改正と「3回制限」

さらに鈴木法相は、法務省が推進する「不法滞在ゼロプラン」や、難民申請を3回までに制限する入管法改正についても言及しました。ルールを守らない外国人に対しては、迅速に国外退去を促す必要があるとの認識を示し、現状の「スピーディーに回せていない」問題を改善していくことで、今後の状況は「かなり条件は改善していく」との見通しを述べました。これらの取り組みは、不法滞在問題の解消と、難民申請制度の悪用防止を目指すものです。

結論

埼玉県の大野知事が提起したトルコ国籍者へのビザ免除一時停止要請は、在日外国人問題、特に難民申請制度の課題と地方の治安悪化が密接に絡み合っている現状を浮き彫りにしました。県は懸命な対策を講じていますが、国レベルでの抜本的な制度改革が不可欠であると強く訴えています。これに対し、鈴木法相は「不法滞在ゼロプラン」やJESTA導入、入管法改正といった政府の対応策を提示し、出入国管理の強化と制度の適正化を図る方針を示しました。今後、これらの政府の施策が、地方が抱える深刻な治安問題に対し、どれほどの効果をもたらすのか、その動向が注目されます。国民の安全と、適切な外国人受け入れのバランスをいかに実現していくかが、日本社会にとって重要な課題であり続けるでしょう。