国民が下した「チェンジ」のジャッジは明確だった。2025年7月20日に投開票が行われた第27回参議院選挙において、昨年10月の衆議院選挙、今年6月の都議選と連敗を重ねていた石破茂首相(68)率いる自民党は、またしても大敗を喫した。改選52議席から39議席へと大幅に減少させ、連立を組む公明党も14議席から8議席に減らす結果となり、与党全体の獲得議席はわずか47議席にとどまった。これにより、自公両党は衆議院に続き、参議院でも「少数与党」の状況に追い込まれ、石破政権の政治的危機が深刻化している。
参議院選挙大敗後、政治的責任が問われる石破茂首相
参院選大敗:石破首相が掲げた「低すぎる目標」も未達
今回の参議院選挙における石破首相の目標は、非改選議席と合わせて自公両党で過半数を維持する「50議席」の絶対死守だった。これは改選前から16議席減という、極めて低い目標設定であったにもかかわらず、その目標すら達成できなかったことが、政権の窮状を浮き彫りにしている。全国紙政治部記者は、「石破首相は、改選前から目標を大幅に引き下げていたにもかかわらず、それすら達成できず、自公は衆議院に続き参議院でも少数与党となりました」と指摘している。この結果は、有権者の現政権に対する不満の表れであり、石破首相の政治的求心力の低下を明確に示した形だ。
「ポスト石破」への影響:参政党の台頭とその背景
今回の参院選で「台風の目」となったのが参政党だ。改選前の1議席から一気に14議席へと急拡大し、神谷宗幣代表(47)の「イチ、ニー、参政党ーッ!」という掛け声も有権者の間で定着しつつある。しかし、その政治的影響力や政策の実現可能性については、依然として未知数な部分が多い。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、「議席は獲得したものの、『核武装は最も安上がりであり、最も安全を強化する』と発言するなど、危うい側面が払拭できていない」と警鐘を鳴らす。
こうした状況下で、自民党内では水面下での動きが活発化している。特に注目されるのが、自民党の萩生田光一元政調会長(61)が参政党に接触を図っていることだ。神谷代表の掲げる保守思想は、萩生田氏が幹部を務めていた旧安倍派の思想と通ずるものがあるため、萩生田氏は流動的な政治情勢を見据え、参政党との連携強化を目論んでいると見られている。神谷代表自身も、こうした動きに前向きな姿勢を示しているとされ、今後の両者の動向が政局の行方を左右する可能性も指摘されている。
進退問題:石破首相の「続投表明」と党内外の反発
参院選の開票が終わった翌日、7月21日の午後、石破首相は記者会見を開き、早々に続投を明言した。「トランプ関税」や「地震」といった「国難」が迫っていることを理由に、「政治的空白を作るわけにはいかない」と主張したが、この説明を額面通りに受け止める者は少ない。
実際、野党からの退陣要求だけでなく、自民党内部からの反発も日増しに強まっている。青森県や愛媛県など複数の自民党県連からは次々と退陣要求が突きつけられ、党内のキングメーカーとして知られる麻生太郎自民党最高顧問(84)も、早期に「石破首相の続投は認めない」との姿勢を明確にした。党内からは「責任を取るべきだ」との声が相次ぎ、石破首相は絶体絶命の状況に追い込まれている。
水面下の「ポスト石破」候補者と次期総選挙への動き
党内ではすでに「ポスト石破」を巡る後継者争いが始まっている。有力候補として名前が挙がっているのは、小泉進次郎農相(44)と高市早苗氏(64)だ。政治アナリストの安積氏は、「自民党がこの苦境を乗り越え、生き残るためには、新総裁を選出した後、国民の期待感が高まっているうちに早期の解散総選挙に打って出るしかない」と分析する。そのため、知名度が高く、国民にアピールできる小泉氏か高市氏のどちらかを立てるしかないという見方が党内で強まっている。
迫る「Xデー」:麻生氏主導の「石破おろし」
石破首相は7月23日、麻生最高顧問、菅義偉自民党副総裁(76)、岸田文雄前首相(67)と緊急会談を開いた。会談後、石破首相は内容について「強い危機感を共有した」と述べ、飛び交う退陣報道に対して「出処進退については一切、話は出ていない」と真っ向から否定した。
しかし、水面下では石破首相の「Xデー」が着実に近づいている。自民党関係者は、「すでに退陣は既定路線であり、あとはそのタイミングだけだ」と語る。当初はお盆明けに退陣を表明すると見られていたが、懸念材料であった「トランプ関税」の引き下げに目途がついたことで、その時期が早まる可能性も出てきている。
「石破おろし」の中心は、やはり麻生最高顧問だ。関係が深い茂木敏充前幹事長(69)に加え、萩生田氏ら旧安倍派の議員も巻き込み、退陣への動きを加速させている。さらに、前首相の岸田文雄氏もここにきて再び「色気」を見せているとの情報もあり、石破首相にはもはや党内に味方がいない状況だ。トランプ関税の引き下げを「手向け」として、あたかも「勇退」であるかのように見せるタイミングを計る段階に入っているとされる。有権者が下した「3アウトチェンジ」という厳しいジャッジは、それほどまでに重いものなのだ。
参考資料
- 『FRIDAY』2025年8月8日・15日合併号
- FRIDAYデジタル