【ニューデリー共同】米紙ニューヨーク・タイムズが30日、ドナルド・トランプ前米大統領(当時)が今秋にインドで開催予定の日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」首脳会合への訪問計画がないと報じ、国際社会に波紋を広げている。複数の関係筋からの情報とされており、事実であれば米印関係の亀裂がさらに深まり、日本の安全保障戦略にも無視できない影響が及ぶ可能性がある。
日米豪印クアッド協力枠組みにおけるトランプ米大統領とインドのモディ首相
「クアッド」首脳会合への影響と中ロ接近の可能性
この報道は、31日から中国天津市で中国、ロシア、インドなどが加盟する上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれるタイミングと重なる。もしトランプ前大統領が「クアッド」を欠席することになれば、インドが中国やロシアへの接近を強める可能性があり、「日米豪印」が推進する自由で開かれたインド太平洋構想に水を差しかねないとの懸念が浮上している。国際地域安全保障の均衡が崩れる恐れもある。
米印関係悪化の背景:ノーベル平和賞示唆と停戦仲介問題
当初、インドのモディ首相はトランプ前大統領を「真の友人」と呼び、両国は親密な関係を維持し、2月にはモディ首相が訪米して会談を行うなど友好的な雰囲気があった。しかし、5月に発生したインドとパキスタン間の武力衝突後、トランプ前大統領が「停戦を仲介した」と主張し始めてから、両国の関係は悪化の一途を辿った。同紙によると、トランプ前大統領は6月17日にモディ首相と電話で会談した際、自身をノーベル平和賞に推薦するべきだと示唆。これに対し、モディ首相は苛立ちを見せ、停戦はあくまでインドとパキスタン間の二国間協議で決定されたもので、米国は無関係であると明確に伝えたとされる。この件が、両国間の外交亀裂を決定的にした要因の一つと見られている。
米印関係の亀裂を深めるノーベル平和賞示唆に関する発言をするドナルド・トランプ前米大統領
結び
トランプ前大統領のインド訪問見送りの可能性は、米印関係の冷却化を象徴し、クアッドの将来的な連携にも影を落とす。これは国際情勢における多角的な外交戦略の重要性を再認識させるものであり、特に日本の安全保障にとって、インドの動向がこれまで以上に注視されることになるだろう。
参考文献
- 米紙ニューヨーク・タイムズ
- ゲッティ=共同