親戚から「年収600万円」という言葉に驚かれた経験を持つ30代の方もいるかもしれません。果たして、30代で年収600万円は一般的な水準を大きく上回るものなのでしょうか?あるいは、それほど珍しくないのでしょうか。本記事では、国税庁の公的なデータに基づき、30代の平均年収と年収別の割合を詳細に分析します。その上で、年収600万円がどの位置づけにあるのかを明らかにし、さらに現在の収入をさらに高めるための具体的な戦略についても解説します。
30代のビジネスパーソンがパソコンを見つめながら思案する様子。年収600万円を達成した喜びと、それが同世代で珍しいことなのかという疑問を抱いている状況を表すイメージ。
30代の平均年収は?国税庁データから見る実態
まず、30代の平均年収がどの程度なのかを見ていきましょう。国税庁が発表した「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、年齢階層別の平均給与は以下の通りです。
- 30歳~34歳:431万円
- 35歳~39歳:466万円
また、同調査によれば、1年を通じて勤務した給与所得者全体の平均給与は459万5000円でした。これらのデータと比較すると、30代で年収600万円という水準は、年齢別の平均年収を大きく上回っているだけでなく、給与所得者全体の平均と比べても明確に高い位置にあると言えます。特に、30代前半の平均に約170万円、後半の平均にも約130万円の差をつけており、客観的に見て高収入であると判断できるでしょう。
年収600万円以上の層はどのくらい?割合で見る希少性
次に、年収600万円の人が全体の中でどのくらいの割合を占めるのかを見てみましょう。前述の国税庁の調査では、年収階級別の給与所得者の割合も示されています。
年収階級 | 割合(%) |
---|---|
100万円以下 | 8.5 |
100万円超~200万円以下 | 13.3 |
200万円超~300万円以下 | 14.8 |
300万円超~400万円以下 | 17.0 |
400万円超~500万円以下 | 15.3 |
500万円超~600万円以下 | 11.2 |
600万円超~700万円以下 | 7.3 |
700万円超~800万円以下 | 5.0 |
800万円超~900万円以下 | 3.3 |
900万円超~1000万円以下 | 2.2 |
1000万円超~1500万円以下 | 4.3 |
1500万円超~2000万円以下 | 0.9 |
2000万円超~2500万円以下 | 0.3 |
2500万円超 | 0.2 |
国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」に基づく年収別の給与所得者割合を示す棒グラフ。年収300万円超~500万円以下の層が最も多く、年収600万円前後の層の割合が限られていることを示唆する。
出典:国税庁長官官房企画課「令和5年分民間給与実態統計調査」を基に筆者作成
この表を見ると、最も多くの給与所得者が属するのは「300万円超~400万円以下」と「400万円超~500万円以下」の階級であることが分かります。年収600万円という水準は、「500万円超~600万円以下」の層が11.2%、「600万円超~700万円以下」の層が7.3%を占めています。つまり、年収600万円前後の層は全体の2割弱に過ぎず、特に600万円を超えるとさらに割合が減少します。このデータからも、30代で年収600万円を稼いでいる人は、決して多くはなく、相対的に高い水準にあると言えるでしょう。
収入アップのための具体的戦略
年収600万円は高い水準にありますが、さらに高みを目指したいと考える方もいるでしょう。ここでは、収入アップに繋がる具体的な方法を3つ紹介します。
専門スキルや資格習得で市場価値を高める
自身の専門知識やスキルを向上させることは、職場での評価を高め、より重要なポジションや昇給に繋がる直接的な方法です。例えば、特定のプログラミング言語、データ分析スキル、プロジェクトマネジメントの知識、高度な語学力(ビジネス英語など)、または簿記やFP(ファイナンシャルプランナー)といった専門資格の取得などが挙げられます。これらのスキルや資格は、自身の市場価値を高め、企業から求められる人材となるための強力な武器となります。継続的な学習を通じて自身の専門性を深めることが、長期的なキャリアアップと収入増に繋がります。
新たな収入源としての「副業」を検討する
近年、副業を容認する企業が増え、本業以外で収入を得る選択肢が広がりつつあります。副業は、単に収入を増やすだけでなく、新しいスキルや経験、人脈を築く機会も提供します。例えば、Webライティング、動画編集、プログラミング、オンラインコンサルティング、自身の専門知識を活かした講師業などが人気の副業として挙げられます。副業を継続することで、将来的には本業以上の収入を得られる可能性もあります。ただし、勤務先の副業規定を事前に確認し、本業に支障が出ない範囲で時間管理を徹底することが重要です。
キャリアチェンジとしての「転職」を視野に入れる
現在の職場で収入の頭打ちを感じたり、自身の能力が正当に評価されていないと感じる場合、転職は有効な選択肢となります。30代は、これまでの職務経験と若さの両方を兼ね備えているため、求人市場での需要が高い世代です。同じ業界内であっても、企業規模や事業内容、給与体系によって年収は大きく異なることがあります。特に、成長産業や高給与水準の企業への転職は、年収の大幅な向上に直結する可能性があります。自身のキャリア目標を明確にし、市場価値を把握した上で、適切な転職活動を行うことが成功の鍵となります。
30代で年収600万円稼ぐ人はそれほど多くない
国税庁のデータから見ても、30代で年収600万円という水準は、同年代の平均を大きく上回る高収入であり、全給与所得者の中でも上位約2割に入る希少な存在であることが明らかになりました。親戚が驚いたのも、この統計的な事実を反映していると言えるでしょう。
現在の年収に満足していない方や、さらなる収入アップを目指したい方は、今回紹介したスキルアップ、副業、転職といった具体的な戦略を検討してみてください。自身の市場価値を高め、多角的な収入源を構築し、場合によっては新たな環境に身を置くことで、着実に年収アップのチャンスを広げることが可能です。
出典
国税庁長官官房企画課 令和5年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-(15、21、23ページ)