臨時国会が9日に会期末を迎え、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」をめぐる論戦は、政権側が一旦は逃げ切る形となりそうだ。攻めきれなかった野党に対し、政府も招待客の選考に関する首相や菅義偉官房長官の答弁が変遷するなど対応のまずさが目立ち、政権の強みとされてきた危機管理のほころびを印象付けた。(大島悠亮)
「少々お待ちください。あまり詳細ですと…」
今月4日午前の記者会見で菅氏は苦笑いを浮かべた。会見では、桜を見る会の招待者名簿を破棄した後のバックアップデータの取り扱いなどについて質問が相次いだ。このテーマでの質疑は約15分に及び、事務方がメモを差し入れたのは11回で、確認のために5回中断した。菅氏は安定した答弁に定評があるだけに極めて異例の光景だった。
原因は、質問が技術的な内容を含むなど「あまりに詳細」だったからだけではない。首相や菅氏の説明が変遷し、格好の追及材料となったからだ。
首相は11月8日に「招待者の取りまとめなどには関与していない」と述べたが、同20日には「事務所から相談を受ければ、意見を言うこともあった」と事実上修正した。菅氏も「推薦枠」について同13日、「首相枠などはない」と説明していたが、同20日には「首相から約1千人」などと明らかにし、答弁がぶれた。
そもそも、初動が遅れた。10月13日に共産党の機関紙「赤旗」が大々的に報じた際に、政府が事態収束に資する想定問答を作成するなどの対応を始めた形跡はみられない。11月8日の参院予算委員会で同党の田村智子氏が取り上げて問題に火が着いても、政府高官は「桜なんて季節外れだ」と楽観視していた。政府は同13日に来年度の会の中止を決め、同15日には首相が官邸で約20分間、記者団の質問に答えて幕引きを図ったが、思惑は外れた。
首相周辺は「長期政権の危機管理の蓄積の中に、似たような前例がなかった」と対応が遅れた理由を語った。菅氏に近い2閣僚が相次いで辞任した経緯もあり、「鉄壁」(与党幹部)ともいわれた菅氏の危機管理手腕を疑問視する向きもある。
ある政府関係者は、「森友・加計問題」を引き合いに出し、「首相が絡む話は『本丸』だけに、野党やマスコミは臨時国会閉会以降も手を緩めない。菅氏も簡単には火消しできないのではないか」と指摘し、問題の長期化に懸念を示した。