パレスチナ自治区ガザでは、深刻な人道危機が続く中、イスラエル軍が27日にガザの一部地域で日中の戦闘を休止し、食料を含む人道支援物資の搬入を一時的に容認しました。この動きは、切迫したガザ住民の状況をわずかながら改善する可能性を秘めている一方で、依然として必要な支援量には遠く、攻撃も続いているため、事態は依然として予断を許しません。世界中がガザの人道状況に注目し、支援のあり方が問われています。
援助物資搬入の現状と課題
イスラエル軍は27日、ガザ中部デールバラハを含む3カ所で日中10時間の戦闘停止を発表し、国連などが安全に物資を運べる「人道回廊」を設けるとしました。これを受け、ガザと国境を接するエジプトの支援当局は、100台以上のトラックがガザに物資を運んだとロイター通信に伝えました。しかし、ガザの人口は200万人を超え、国連はかつて1日あたりトラック500台分の物資搬入が必要と指摘しており、現状ではそのわずか5分の1にも満たない状況です。餓死者の急増が報じられる中、国連当局者はさらに「膨大な量の支援物資」が必要であると訴えています。
エジプト国境からガザ地区へ向かう人道支援物資を積んだトラックの列
攻撃の継続と指導者の姿勢
戦闘の一時休止が宣言されたにもかかわらず、ガザへの攻撃は継続しています。中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)は、27日だけで攻撃により住民63人が死亡し、そのうち34人が食料を求めていたと報じました。イスラエルのネタニヤフ首相は、今後も物資の流入は容認する方針を示しつつも、「完全な勝利」に向けて前進すると述べており、軍事作戦の継続を示唆しています。このことは、人道支援と軍事行動の狭間で揺れ動くガザの現実を浮き彫りにしています。
空輸による支援と陸路の限界
ヨルダン政府当局者によると、同国とアラブ首長国連邦(UAE)は27日、25トン相当の物資をガザ上空から投下しました。同日には両国に先立ちイスラエル軍も物資を投下したと発表しましたが、ヨルダン当局者は、空輸では陸上での物資搬入には及ばないと釘を刺しています。空輸は迅速な支援が可能であるものの、その規模や効率性には限界があり、大規模な人道危機に対応するには、陸路からの安定的かつ大量の物資搬入が不可欠であることを示しています。
現地住民の声と治安の悪化
ガザ中部に暮らす女性アリア・アハメドさんは27日、交流サイト(SNS)を通じた産経新聞の取材に対し、エジプトから届いた支援物資の一部が略奪されるなど「治安が悪化している」と窮状を訴えました。また、粉ミルクの価格が高騰しており、「子育てがとても厳しい状況だ」と語り、生活必需品の不足と価格高騰が住民を追い詰めている実態が浮き彫りになりました。紛争の長期化は、住民の日常生活に深刻な影を落としています。
ガザ地区で人道支援物資の配給を待つ住民と治安悪化の様子
拡大する死者数
ガザ保健当局は27日、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの戦闘が始まった2023年10月以来、過去24時間で餓死者が6人増加し、計133人に達したと発表しました。紛争による総死者数は5万9800人を超えており、食料不足と戦闘による犠牲者が日々増え続けている惨状が続いています。この数字は、ガザが直面する人道危機の深刻さを明確に示しており、国際社会による早急かつ抜本的な対応が求められています。