7月15日から20日にかけ、東京体育館で開催されたバドミントンの『ジャパンオープン』は、日本のファンにとって期待と課題が入り混じる大会となった。特に女子シングルスの宮崎友花選手(18)にとっては、高校卒業後初の国内主要大会ということもあり、凱旋試合として大きな注目を集めていた。しかし、結果は惜しくも二回戦敗退。期待された優勝には届かなかったものの、この経験は彼女の未来、特に2028年ロサンゼルス五輪での活躍に向けて、重要な成長の糧となる兆しを見せた。
宮崎友花の輝かしいキャリアとプレースタイル
若き天才の軌跡:世界ジュニア制覇から急成長
宮崎友花選手は、わずか6歳で母親の影響からバドミントンを始めると、すぐにその非凡な才能を開花させた。強豪として知られる山口県立柳井商工高校に進学後、在学中に世界ジュニア選手権を制覇し、“天才少女”としての名を轟かせた。プロ転向後は山口県内の実業団『ACT SAIKYO』に所属し、日本代表としてBWFワールドツアーでの優勝も飾り、世界ランキングは6位まで急上昇。その活躍ぶりから、早くも2028年ロサンゼルス五輪でのメダル獲得が期待される、日本バドミントン界の新たな希望となっている。
長身を活かした攻撃型スタイル:平野貴也氏の分析
身長164cmという、山口茜選手(28)や奥原希望選手(30)といった日本の偉大な先輩たちにはない恵まれた体格は、宮崎選手の最大の魅力の一つだ。スポーツライターの平野貴也氏は、そのプレースタイルについて次のように語る。「身長を活かした攻撃的なスタイルが持ち味です。素早いフットワークでシャトルの落下点に素早く入り、高い打点からのオーバーハンドで多種多様なショットを繰り出します。」
バドミントンジャパンオープンで奮闘する若き宮崎友花選手。真剣な眼差しでシャトルを見つめ、次世代クイーンとしての技術と精神的課題が垣間見える一枚。
さらに、平野氏は宮崎選手の強みの根源として、その優れた洞察力を指摘する。「相手の動きを瞬時に見極め、ネット前かコート奥深くまで打ち分けるのが非常に巧みで、相手の裏をかくのが得意です。力強いスマッシュ、ネット際に深く沈めるカット、そして相手をコート奥に押し込むクリアと、常に相手に3択を迫りながら、その心理の逆を突くプレーを展開します」。この戦略的な洞察力が、彼女の攻撃的なスタイルを支える基盤となっている。
ファンを魅了する″次世代クイーン″の素顔
コート上での凛々しい姿とは対照的に、ユニフォームを脱いだ宮崎選手はまだあどけない18歳の少女の顔を見せる。オフにはディズニーランドによく足を運ぶという彼女は、バドミントンシューズの紐の色を左右で変えるなど、ファッションにもこだわりを見せる一面も。このプレーとのギャップが多くのファンの心をつかみ、彼女のインスタグラムのフォロワー数は17万人を超えるなど、その人気は実力に比例して高まっている。
ジャパンオープンで露呈した新たな課題と成長の兆し
高い人気と実力を兼ね備える宮崎選手だが、勝ち続ける中で新たな課題にも直面している。それは、「追う立場」から「追われる立場」へと変化したことによるメンタル面での変化だ。
精神的なプレッシャーとミスの連鎖
平野氏は、自身と同格か、あるいはランキングが下の選手との対戦が増えたことで、「うまくいかないとイライラし始め、ミスが増えてくる」と分析する。「勝って当たり前」というプレッシャーから、一度歯車が狂うと立て直すのが難しい試合が目立つようになったという。
「相手の逆を突く攻撃ができなくなり、返球の選択肢が狭まることで相手に読まれ、ポイントを取られる悪循環に陥ります。焦りからミスショットを重ね、自滅してしまうケースも見受けられます」(平野氏)
ネット前対策と苦戦:折山淑美氏の見解
この課題は、今大会でも顕著に現れた。現地で取材を行ったスポーツジャーナリストの折山淑美氏は、世界ランキング11位のインドネシア人選手との二回戦を次のように振り返る。「優勝への強い気持ちが前面に出てしまい、プレー全体に硬さが見られました。自分からミスを重ねる展開で、終始相手にリードを許してしまいました」。さらに、相手選手の“宮崎対策”が光ったという。「相手は宮崎選手の得意なオーバーハンドショットを封じるため、徹底してネット前に球を集める戦略を遂行しました」。この戦術に苦しめられ、思うようなプレーができなかった。
敗戦の中に見えた粘りと進化
メンタルコントロールとネット前でのショットの安定性は、宮崎選手にとって今後の大きな伸びしろである。しかし、折山氏はその敗戦の中でも、宮崎選手の成長の兆しが見えたと指摘する。「劣勢の中でも焦ることなく、粘り強くシャトルを拾い、ラリー戦に持ち込もうとする狙いは明確に見えました。ラリーが長引けば、相手はネット前ばかりを狙い続けることはできないため、どこかで大きな展開を入れざるを得なくなります。その隙を狙って、得意な高打点のショットを沈めるシーンも随所に見られました」。
今大会では結果こそ伴わなかったが、宮崎友花選手は日本のバドミントン界の将来を担う最も期待される若手選手であることに変わりはない。このジャパンオープンでの経験は、彼女がさらなる高みを目指す上で必ず乗り越えるべき壁であり、その過程で得られた学びは計り知れない。
ロス五輪へ向けた挑戦の始まり
ジャパンオープンでの苦い経験は、宮崎友花選手にとって単なる敗戦以上の意味を持つ。それは、″次世代クイーン″として、自らの課題と真摯に向き合い、さらなる進化を遂げるための重要な一歩となるだろう。2028年ロサンゼルス五輪で大輪の花を咲かせるための彼女の戦いは、まさに今、始まったばかりだ。今後の彼女の活躍から目が離せない。
参考文献
- 『FRIDAY』2025年8月8・15日合併号
- FRIDAYデジタル (https://friday.kodansha.co.jp/article/433205)
- Yahoo!ニュース (https://news.yahoo.co.jp/articles/344f47510e5de121228f08c751226eddc9c9c90d)