自民党総裁を務める石破茂首相(68)は7月23日、党本部で麻生太郎(84)、菅義偉(76)、岸田文雄(67)の3人の首相経験者と1時間20分に及ぶ会談を行いました。先の参院選での自民党大敗を受け、「石破おろし」の声が高まる中、この会談は石破総理の進退を巡る正念場と位置付けられています。党内の権力闘争が激しさを増す中、永田町は緊張に包まれています。
麻生氏、石破総理に退陣勧告か:繰り返される「おろし」の歴史
会談の口火を切ったのは麻生氏で、石破総理に対し「首相では選挙に勝てないという民意が示された」と発言、退陣を勧告するニュアンスをにじませたと言います。麻生氏と石破氏の間には、過去からの確執が存在します。2009年8月の衆院選で自民党が大敗し、旧民主党への政権交代が実現した際、麻生政権下ではリーマン・ショックによる世界的な大不況が発生。これに対し総選挙を延期し経済対策に注力する麻生氏に一部の自民党議員が反発し、「麻生おろし」が起きました。その中心人物の一人が、現在の石破総理だったのです。
そのため、今回の「石破おろし」では麻生氏が中心人物の一人として動いています。自民党が先の参院選で大敗したことを受け、石破総理の責任を問う両院議員総会の開催を求める署名活動が行われており、これを担っているのが麻生派の議員たちです。さらに、昨年9月の自民党総裁選で石破氏に敗れた高市早苗さん(64)に対し、麻生氏が接近し、現在に至るまで親密な関係を築いてきたことが注目されています。
石破茂総理大臣、厳しい政局の中で正念場を迎える表情
「ポスト石破」高市早苗氏の課題:党内反発と「キングメーカー」の影
7月23日、高市氏は親しい国会議員約10人を引き連れ、麻生氏と衆議院宿舎で会談を行いました。政治アナリストの伊藤惇夫氏は、高市氏の「ポスト石破」としての可能性について次のように分析します。「高市さんは非常に保守的な主張を貫き、激しい賛否両論の対象となっているのはご存知の通りです。そのため、高市さんが新しい首相となると、支持する有権者と不支持の有権者が激しく対立し、日本もアメリカのように国が2つに分断されるという指摘は少なくありません。」
伊藤氏は、高市氏が自民党総裁選で勝利するのは容易ではないと考えています。その第一の理由として、麻生氏の存在を挙げます。麻生氏が高市氏の「後見人」であるかのような行動を続けていることが、党内の反発を招く可能性があるというのです。「麻生さんの行動は、昭和の自民党から続く『キングメーカー』の再来と受け取られるのではないでしょうか。『ポスト石破』の有力候補として高市さんの存在感が増せば増すほど、『旧態依然とした麻生さんのイメージは、有権者の反発を招く懸念が強い』という党内の異論も激化するかもしれません」と伊藤氏は指摘します。
キングメーカーとしての動向が注目される麻生太郎氏の、リラックスしたウォーキング姿
現在の自民党は、総裁である石破総理の進退を巡る議論に加え、次期総裁選を睨んだ各派閥の思惑が複雑に絡み合う政局の渦中にあります。麻生氏と石破氏の歴史的確執、そして麻生氏が高市氏を推す動きが、今後の自民党総裁選にどのような影響を与えるのか、そしてそれが日本の政治情勢にどのような影響を及ぼすのか、その動向が注目されます。
参考文献: