近年、ChatGPTに代表されるAIチャットボットは、情報収集から資料作成、語学学習、さらには小説や脚本の執筆に至るまで、その応用範囲を急速に広げています。人類は、膨大な情報を網羅するだけでなく、個々のニーズに合わせた人工知能を求める時代へと突入しました。AIチャットボットは瞬時に情報を提供し、高い共感力と臨機応変な対応を可能にするため、いかにAIをカスタマイズし、効果的なプロンプトで指示を出すかといったノウハウも広く共有されています。しかし、このような便利な機能がある一方で、その利便性を「小ずるく」活用しようとするケースも散見されます。文明の利器の使い方は個人の自由とはいえ、友人やビジネスパートナーから送られてきた文面があからさまにAI仕様だった場合、受け手が抱く感情は複雑です。
AIチャットボットの利便性と「バレる」背景
筆者の友人の事例では、年下の後輩からの度重なる失礼な言動を指摘したところ、明らかにAIが作成したと思われる長文の謝罪メールが送られてきたと言います。その文面に友人には「脱力感を覚えた」とのことでした。
AIの利用が「バレる」という言葉が検索サジェストに頻繁に現れることからも、後ろめたさを感じながらAIを使っている人が少なくないことがうかがえます。では、なぜAIを使ったことが露呈してしまうのでしょうか。
AIが生成した文章をPC画面で確認する人物。デジタルコミュニケーションにおけるAI利用の葛藤を示す。
AIが作成した文章が本人からかけ離れた文体であったり、内容に明らかな誤りが含まれていたりすると、「手抜き」という印象を与えかねません。特に人間関係が絡むやり取りにおいて、その影響は顕著です。
「AI利用」が相手に与える印象とは？
「これはAIだな」と看破した経験を持つ人や、結果的にAIだと判明した人々のエピソードからは、AI利用がもたらす印象の違いが見て取れます。ある60代の女性は、知人の紹介で滞在した若い男性から送られてきたお礼のメールがAIで作られたものだと感じ、尋ねると「バレました〜」と返ってきたそうです。冗談として受け流せる関係性だったから良かったものの、「おばさんにはAIを使ってもバレないと思ったのかな」と少し寂しさを感じたと言います。
お礼や謝罪の文章がAIだと判明した場合、気まずい空気が流れることは想像に難くありません。目上の人に対しては普段と異なる丁寧な文体が求められるため、ある程度の定型に沿った方が無難であり、だからこそAIに頼りがちになるという側面もあります。かつて「手紙の書き方」に関するテンプレート集が重宝されたのと同様に、AIも現代における文章作成の補助ツールの一つと考えることもできるでしょう。
しかし、AIが作成した文章が、普段のその人の話し方や書き方とあまりにもかけ離れていたり、感情がこもっていないと感じられたりする場合、受け手は不快感を覚える可能性があります。どこまでをAIに任せ、どこからを人間が手を加えるべきか、この「さじ加減」は非常に難しく、受け手の感性や許容度によっても大きく異なるのが現状です。
まとめ
AIチャットボットは、私たちの生活や仕事を効率化する上で計り知れない可能性を秘めています。しかし、お礼や謝罪といった人間関係の機微が絡むコミュニケーションにおいては、その利用に慎重さが求められます。AIが提供する完璧な定型文が、時に「真心がこもっていない」と受け取られ、かえって相手に不信感を与えてしまうこともあるからです。
デジタル化が進む現代において、AIの活用は避けられない潮流ですが、人間らしい温かさや誠実さをどのように表現し続けるかが、これからのコミュニケーションにおける重要な課題となるでしょう。AIを賢く使いこなしつつも、肝心な場面では自身の言葉で感情を伝える意識を持つことが、より円滑で信頼性のある人間関係を築く鍵となります。
