石破首相の「異例の居座り」と自民党の危機:3連敗後の「石破おろし」の背景を深掘り

衆院選、東京都議選、そして参院選と、自民党が歴史的な3連敗を喫し、ついに衆参両院で過半数割れという事態に陥ったにもかかわらず、石破茂首相がその座に居座り続けている。一方で、裏金問題や相次ぐスキャンダルで自民党敗北の要因を作ったとされる議員たちが、「このままでは選挙に勝てない」「政権を失う」と危機感を募らせ、石破首相の退陣を求める「石破おろし」の動きを活発化させている。この奇妙な権力闘争は、マスコミによって連日大きく取り上げられ、野党もその成り行きを見守るばかりだ。物価高やトランプ関税が国民の日常生活に暗い影を落とす中、政治家たちの「自分ファースト」な自己保身が露呈する様は、多くの国民の不満を増幅させている。なぜ、日本の政治はこのような緊張感も躍動感もない状態に陥ってしまったのか。今回の自民党の混乱は、日本の民主主義が大きな転換点に差し掛かっていることを示唆しているのかもしれない。

「自分ファースト」の権力闘争と国民の不満

石破政権は、昨年の衆院選での過半数割れに始まり、今年の6月に行われた東京都議選でも惨敗、そして参院選でも大敗し、衆参両院で過半数割れという前代未聞の事態に直面している。通常であれば首相の退陣は避けられない局面だが、石破首相は続投の意向を崩していない。この状況下で、自民党内部からは、党の敗北の責任を負うべき議員たちが、自身の政治生命を守るために「石破おろし」に奔走しているという指摘がある。ジャーナリストの城本勝氏は、この動きを「自民党敗北の原因を作った議員たちが、石破おろしに血道を上げている」と批判し、参政党や国民民主党が支持を集めた真の意味を、自民党の議員たちが全く理解していないようだと述べている。

[石破首相の「異例の居座り」と自民党の危機:3連敗後の「石破おろし」の背景を深掘り

自民党両院議員懇談会後、記者団の質問に応じる石破茂首相。2025年7月、東京・永田町の自民党本部にて、政権の行方に注目が集まる中、石破氏の動向を示す重要な瞬間。](https://news.yahoo.co.jp/articles/3d5d81314084385d2589f2e6c48f7de487e8c197/images/000)

国民が物価高や国際情勢の不安定さによる経済的な不安を抱える中で、政治家たちが自己保身に走る「自分ファースト」な権力争いを繰り広げている現状は、政治への信頼をさらに低下させている。有権者は、現状の政治に明確な答えを求めており、自民党が示す混乱は、日本の政治が抱える構造的な問題を浮き彫りにしていると言えるだろう。

「スリーアウトチェンジ」の常識を超えた首相の「居座り」

これまでの政界の常識に照らし合わせれば、歴史的な3連敗を喫した石破首相には、退陣以外の選択肢はないとされる。唯一の問題は、いつ、どのような形で辞任するか、という点である。昨年の衆院選が本来の「政権選択選挙」であったにもかかわらず、その選挙で自民党が過半数割れを喫し敗北した後も、野党がまとまらなかったために少数与党のまま石破政権が存続してきた。そのため、今回の参院選は、自公連立の石破政権を今後も継続させて良いのかどうか、国民に改めて信を問う事実上の「政権選択選挙」としての意味合いが強かった。

その選挙で自公は惨敗し、有権者は「今の自公政権」以外の選択肢を選んだと見なされる。この結果を受けてなお、石破首相の続投を認めることは、いかなる政治的理屈や理論をもってしても説明が困難である。自民党きっての皮肉屋として知られる茂木敏充前幹事長は、26日に公開した自身のYouTube番組で、衆院選、東京都議選、そして参院選の敗北について「3連敗、スリーアウトチェンジみたいな状態だ。何らかのけじめをつけないと自民党再生の道は見えてこない」と石破首相を痛烈に批判した。野球に例えれば、スリーアウトを宣告されたにもかかわらず、バッターボックスに立ち続けるような首相の姿は、責任感や判断力の欠如と捉えられ、政権を預かる最高指導者としてはこれ以上ない屈辱的な評価である。

歴代首相との比較に見る「特大ブーメラン」

参院選で過半数割れを喫するほどの惨敗を経験した自民党の首相は、過去に3人いる。1989年の参院選で大敗した宇野宗佑首相と、1998年の参院選で敗北した橋本龍太郎首相の2人は、選挙結果が出た直後に速やかに退陣を表明した。これに対し、2007年に同様の状況に陥った安倍晋三首相だけが、直ちに退陣表明をしなかった。石破首相の現在の行動は、即座に責任を取った過去の首相たちとは明確に異なるものであり、その「居座り」は、自身の過去の言動がブーメランのように跳ね返ってくる状況を生み出していると言える。

参考文献