米調査会社リーダーシップIQの調査によると、自身の仕事に「良い仕事」をしていると感じている従業員はわずか36%に過ぎません。さらに憂慮すべきは、これらの優秀な社員が、業績が振るわない同僚よりも仕事への思い入れが少なくなる傾向があり、労働力全体の安定を脅かす危険なサイクルを生み出している点です。この調査結果は、多くの企業にとって痛烈な警鐘と言えるでしょう。組織の成功を牽引するごく一部の従業員に最も大きな負荷がかかり、彼らが退職を検討する可能性が最も高い状況が見過ごされています。
優秀な社員に集中する過剰な負荷
ほとんどの組織において、「素晴らしい仕事」をする36%の従業員は、自身の業務を完璧にこなすだけでなく、業績が低いとされる64%の従業員の分まで補っているのが実情です。彼らはしばしば残業して他の人が生み出した問題を解決したり、締め切り間近の追加プロジェクトを引き受けたりします。また、同僚から頼られる非公式なメンターや問題解決者としての役割も果たしています。並みの業績の人は与えられたタスクをこなすだけですが、優秀な人々はさらに、同僚の成功を助け、困難な業務に率先して取り組み、問題をチーム全体の学びの機会に変えるなど、本来の業務範囲を超える重要な貢献をしています。しかし、このような高水準の貢献者が全体の3分の1にとどまる場合、彼らは組織の「生命維持装置」となります。どんなに強力な装置でも、絶え間ないプレッシャーの下ではやがて壊れてしまう可能性があります。
会議で話し合う従業員たち:優秀な社員とそうでない社員の間の生産性ギャップを示唆
認識のズレと不当な評価
問題の一因は「認識の矛盾」にあります。業績の高い社員は、彼らの卓越した仕事が賞賛されるよりもむしろ「当然期待されていること」と見なされることが多いと報告しています。その一方で、管理職は業績の振るわない従業員の指導に多くの時間を割くため、業績が低い人々が不均衡なほど多くの注目を浴びる結果となります。これは、平均的な能力が注目され、卓越した能力が当然視されるという、インセンティブが逆転した構造を生み出します。結果として、優秀な社員は、不均衡なほど多くの責任を負っているにもかかわらず、正当に評価されていないと感じるようになります。これは、仕事への意欲を低下させたり、退職を検討する原因となったりします。
低いパフォーマンスに対する責任の欠如
もう一つの重要な要因は、低い業績に対して責任が問われない職場環境です。期待される水準に達していない仕事に対して何の責任も求められない場合、優秀な社員があらゆる問題の当然の解決者となってしまいます。このような状態では、彼らは他の社員の問題の後始末をし、能力の格差を埋め、能力が不十分な社員が多く存在するにもかかわらず、組織全体の目標が達成されるように奮闘することになります。これは意図せずして、業績の低い社員を支援する「パフォーマンスの手助け」という状況を生み出します。優秀な社員は一貫して、管理職が従業員に業績に対する責任を厳格に求めているかについて疑問を呈しています。彼らは、同僚が責任を問われることなく平均以下の仕事をしているのを横目に、その不足分を補うために自身の仕事量を増やしている状況を目の当たりにしています。
キャリアコントロールの危機感
さらに憂慮すべき点として、優秀な社員は、自身のキャリアの成功が自分自身ではコントロールできない外部要因に左右されていると感じています。彼らは常に素晴らしい結果を出しているにもかかわらず、昇進の機会が自分よりも能力の低い同僚に回っているのをしばしば目にします。また、業績が低い社員の給与が同等に上がる状況や、実力や貢献度を完全に無視したかのような組織の決定も目の当たりにしています。心理学でいうところの「結果の責任を内的要因に求める考え方」(内的なコントロールの感覚)の欠如は、離職の可能性を強く示唆するものです。優秀であること、つまり高い成果を出すことが昇進や正当な評価につながらないと結論付けた場合、彼らは通常、「優秀であることは努力に値しない」と判断するか、自身の貢献を正当に認めてくれる別の組織を探し始めるでしょう。
結論として、米調査は多くの企業が直面する深刻な課題を浮き彫りにしています。組織を支え、成功に不可欠な役割を果たしているわずか36%の優秀な社員たちが、過剰な負荷、正当な評価の欠如、低いパフォーマンスへの無責任、そして自身のキャリアに対するコントロール感の喪失といった要因により、最も離職しやすい層となっている現実です。これは単なる人事の問題ではなく、組織全体の生産性と持続可能性を脅かす危険な兆候であり、早急な対応が求められます。
参照:
- 米調査会社 Leadership IQ
- Forbes
- https://news.yahoo.co.jp/articles/e2777088b220fdd1ad1e44e91ef51fe129f5c05e