自民党と日本維新の会が政策合意書に「原子力潜水艦の保有」を明記したことで、日本国内では原潜保有の是非に関する国民的な議論が活発化しています。インターネット上では「核搭載可能な原潜4機を日本は持つべきだ」といった賛成意見が多数見られる一方で、その実現可能性や実用性については専門家の間でも意見が分かれています。
ネット上の反応と軍事ジャーナリストの視点
X(旧Twitter)では、「海に囲まれた日本は原潜を持つべき」、「高市さんなら原潜配備はできると思う」、「日本が原潜持たないのは、治安悪い地域に警察がいないようなものだ」など、原潜保有を支持する声が相次いでいます。しかし、ある軍事ジャーナリストは「日本が原潜を保有することは、メリットをデメリットが上回る可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。
小泉進次郎防衛相の肖像
巨額なコスト:原潜とディーゼル潜水艦の比較
原潜保有の最大の課題は、その莫大なコストです。日本が自国で建造する場合でも、アメリカからの購入にしても、天文学的な予算が必要となります。例えば、アメリカ海軍のコロンビア級戦略原潜の建造費は1兆円を優に超え、現実的な選択肢とされる攻撃原潜のバージニア級でも約4000億円から6000億円が必要です。これに対し、海上自衛隊が運用する最新鋭の国産ディーゼル潜水艦「たいげい型」は、高性能でありながら約800億円で建造可能です。
さらに、原潜は1隻だけでは任務を効率的に回すことができません。任務遂行と乗組員の休養サイクルを考慮すると、最低でも4隻の保有が必要とされており、その場合の純粋な建造費だけでも最低1兆6000億円が必要になると見積もられています。これに原子炉の整備や修理といった運用コストが加われば、防衛費を著しく圧迫することになります。
世界一の性能を誇る日本の「たいげい型」ディーゼル潜水艦
軍事ジャーナリストは、1兆円を超える建艦費を投じて「日本原潜」を整備しても、現状ではディーゼル潜水艦「たいげい型」の方が戦力になると指摘します。日本のディーゼル潜水艦は世界一の性能を誇り、最悪の事態において敵国の原子力空母や原潜を沈めるだけの能力を持っていると評価されています。
この「たいげい型」の強さの秘密は、圧倒的な性能を持つリチウムイオン電池にあります。原潜は原子炉が水中でも電気を生成するため、極めて長期間の潜水が可能ですが、従来のディーゼル潜水艦は発電時に空気が必要です。「たいげい型」は、ディーゼルエンジンで発電した電気を高性能リチウムイオン電池に充電することで、水中での行動期間を大幅に延長しました。その潜水可能期間は機密扱いですが、2週間は余裕とされており、防衛作戦には十分な能力とされています。
なお、韓国が原潜建造に意欲を見せる背景には、日本へのライバル意識だけでなく、高性能な充電池の開発が遅れているという側面も無視できないとされています。
結論
日本における原潜保有の議論は、国防上のメリットと巨額なコスト、そして既存の高性能ディーゼル潜水艦「たいげい型」の存在という複数の要因が絡み合っています。コストパフォーマンスと実用性を考慮すると、現時点では「たいげい型」が日本の防衛戦略において非常に有効な選択肢であることが示唆されています。




