内装工事トラブル発端の監禁暴行事件、新たに2容疑者逮捕の真相

内装工事の報酬を巡る金銭トラブルが発端となり、30代男性が約3ヵ月にわたり監禁・暴行を受け重傷を負った事件。既に大城優斗容疑者(24)ら7名が逮捕監禁致傷の容疑で逮捕されていましたが、7月26日、警視庁捜査一課は新たに川村理容疑者(50)と上野優容疑者(21)の2名を同容疑で逮捕したと発表しました。この事件は、単なる金銭トラブルに留まらず、被害者の心身に深刻なダメージを与えた極めて悪質なものです。

新たな逮捕容疑者と事件の経緯

7月26日早朝、高島平署へ連行されてきた川村容疑者は、集まった報道陣の目を避け、終始両手で顔を覆い続けました。その約90分後に連行された上野容疑者も同様に顔を隠し、警察官に促されるようにして建物内へ入っていったと報じられています。

捜査関係者によると、川村容疑者も先に逮捕された大城容疑者らと同様に、元請け業者との間で工事代金の支払いを巡るトラブルを抱えていたとみられ、被害男性の監禁を共謀して始めたとされています。一方、上野容疑者は大城容疑者の後輩であり、被害男性の見張り役を務めていたようです。取り調べに対し、川村容疑者は「よく知りません」、上野容疑者は「言葉になりません」と供述しているとのことです。

監禁暴行事件に関与し、逮捕され移送される容疑者の姿監禁暴行事件に関与し、逮捕され移送される容疑者の姿

悪質極まる監禁・暴行の実態

被害男性に対する監禁・暴行は、実に3ヵ月もの長期間にわたり、凄惨な内容だったことが明らかになっています。全国紙社会部記者によると、事件の発端は昨年末、大城容疑者が施工した内装のクロス張りにクレームが寄せられたことでした。元請け業者の男性が「やり直し後に報酬を支払う」と伝えたところ、大城容疑者らは今年1月中旬にこの男性を拉致し、代金を要求。元請け業者は正規の工事代金以上の額を支払わざるを得ませんでした。

しかし、大城容疑者らの暴挙はそれだけでは終わりませんでした。1月29日午前1時頃、彼らは豊島区の路上で再び男性を無理やり車に押し込み、連れ去ったのです。男性は茨城県の山中に連れて行かれ、「殺す。山に埋める」と脅された後、「もっと金を取るため殺さないことにした」と撤回されました。

その後、男性は都内やその周辺のレンタルルーム、トランクルーム、民泊施設などを転々とさせられ、3ヵ月間にわたり監禁と暴行を受け続けました。特にトランクルームでは約20日間ずつ2回監禁され、食事は2日に1回しか与えられないという過酷な状況だったとされています。

監禁中、大城容疑者らは男性に借金をさせ、保険の解約を迫るなどして約200万円を強奪しました。さらに、特殊詐欺の〝かけ子〟のような行為まで強要していたとみられています。男性が失敗すると、熱したフライパンで殴る、背中に熱湯をかける、顔をドライバーで突き刺すといった残虐な〝罰〟を与えられていました。

被害男性の心身に及ぼした影響とストックホルム症候群

事件が発覚したのは、4月28日に被害男性の関係者が高島平署に「監禁されているかもしれない」と相談したことでした。そして同30日、豊島区内で事故を起こした大城容疑者の車を警察が発見。現場から逃走した大城容疑者の車中に、男性が取り残されているのが見つかりました。

男性は肋骨や腰の骨折、全身やけどなどで全治6ヵ月の重傷を負っていました。加えて右眼がぼやけるなどの症状があり、深刻な栄養失調状態でひどく衰弱していたといいます。それでも男性は当初、「自分は監禁されていない」「悪いのは私なんです」などと容疑者らをかばっていたとされ、いわゆる〝ストックホルム症候群〟のような状態だったと報じられています。

心理カウンセラーによると、ストックホルム症候群とは「監禁や誘拐などの極限の状態で起きる人間の心理現象」であり、「加害者に完全に支配されてしまった状況下では、被害者は敵対的な行動を減らして協力的に振る舞おうとする」ものだと説明されています。これは、「加害者のちょっとした親切が優しく感じられたり、加害者を好意的にみることでストレスを軽減しようとする〝感情の合理化〟が働き、生存のための心のメカニズムが作用する」ためとされています。

被害男性に重傷を負わせただけでなく、その心までも支配した容疑者たち。今回の追加逮捕により、事件の全容と、彼らをこのような残虐な犯行に駆り立てた動機が徹底的に解明されることが待たれます。

参考文献

  • FRIDAYデジタル