NHK連続テレビ小説「あんぱん」の第88回が7月30日に放送され、北村匠海さん演じる嵩(やなせたかし氏がモデル)が百貨店の包装紙に筆記体で文字を書き入れるエピソードが描かれました。この描写が、国民的キャラクター「アンパンマン」の生みの親であるやなせたかし氏にまつわる有名な史実に基づいているとして、視聴者の間で大きな反響を呼んでいます。
ドラマ「あんぱん」で描かれた包装紙エピソード
ドラマ「あんぱん」第88回、北村匠海演じる嵩が百貨店包装紙に筆記体で文字を書き入れる場面
ドラマでは、三星百貨店の宣伝部に就職した嵩が、その仕事の速さと才能で出川部長(小田井涼平さん)から高く評価される場面から始まります。三星百貨店は包装紙を新調することになり、洋画界で人気を博す猪俣昇一郎にデザインを依頼。嵩は猪俣の自宅へデザインを受け取りに赴きました。持ち帰ったデザインは、白い紙に赤い紙を貼っただけの極めてシンプルな原画で、出川部長は拍子抜けします。しかし、猪俣からは「『ミツボシ』という字はそちらで書くように」と指示があり、嵩は「このシンプルさが新鮮でいい」と話し、自らが筆記体で「mitsuboshi」と書き入れ、包装紙が完成するという流れで描かれました。
史実が明かす「三越の包装紙」誕生秘話
このドラマのエピソードは、やなせたかし氏の実際の経歴に基づいています。史実によると、1947年(昭和22年)に上京したやなせ氏は、現在の三越百貨店に入社し、宣伝部でその才能を発揮しました。そして、1950年(昭和25年)には、洋画家である猪熊弦一郎氏が、現在に至るまで長く愛用されている三越の象徴的な包装紙「華ひらく」をデザイン。この時、「mitsukoshi」という百貨店名を筆記体で書き入れたのが、当時三越に勤務していたやなせたかし氏本人であったとされています。このデザインは、70年以上経った現在もその姿を変えることなく、多くの人々に親しまれ続けています。
視聴者の反響と歴史的価値
今回の放送を受け、SNS上では「有名なエピソードきたーー!!」「三越のロゴ、やなせたかし氏が書いてたの知らなかった!1950年からずっと変わってないのもすごい!」「文字で完成するデザイン、すごっ!」「三越の包装紙を見る目が変わる」「何気ないステキなセンスさすが」といった驚きと感嘆の声が多数上がりました。ドラマを通じて、やなせたかし氏が「アンパンマン」の作者であるだけでなく、日本のデザイン史や商業デザインにも多大な貢献をしていたという、知られざる一面が改めて脚光を浴びた形です。このエピソードは、日常の中に溶け込んでいるデザインにも、それぞれの歴史や物語があることを示唆しており、単なるドラマの一場面に留まらない歴史的価値を持つものと言えるでしょう。