千原せいじ「いじめられっ子発言」の波紋:芸能界、仏教界、そしてテレビ業界への影響

お笑いコンビ「千原兄弟」のメンバーであり、昨年天台宗の“僧侶”となった千原せいじ氏(55)の「いじめられっ子」発言が、広範な波紋を呼んでいます。この問題は、彼の芸能活動だけでなく、彼が関わってきた仏教界、さらにはテレビ業界全体にまで影響を及ぼし、様々な議論を巻き起こしています。発言の背景から、各方面での反応、そして今後の彼の活動への影響までを深く掘り下げていきます。

問題の発端:「いじめられっ子発言」の詳細と波紋の拡大

今回の騒動の発端は、7月18日に千原せいじ氏のYouTubeチャンネル「せいじんトコ」で公開された、埼玉県戸田市議会議員の河合ゆうすけ氏との対談動画でした。この対談は「外国人問題」をテーマにしていましたが、口論に発展する中で、千原氏は河合氏に対し「おまえ、いじめられっ子やったやろ? なぁ? おまえいじめられっ子出身やな! アハハハハ!」と発言。これに対し河合氏も「いじめられっ子をバカにしている! みなさん拡散してください! スポンサーさんこれいいんですか?」と応酬し、動画は瞬く間に拡散され、7月29日時点で141万回を超える再生数を記録するなど、大きな話題となりました。

天台宗の僧侶姿で写る千原せいじ。いじめられっ子発言が仏教界に波紋を広げている様子。天台宗の僧侶姿で写る千原せいじ。いじめられっ子発言が仏教界に波紋を広げている様子。

千原氏は昨年5月にSNSで天台宗・千原靖賢和尚となったことを報告し、その“がさつ”なイメージとのギャップが注目を集めました。さらに同年11月には、日本仏教協会の顧問に就任したことも発表していました。しかし、今回の騒動の前後で、日本仏教協会は千原氏が2ヵ月前に顧問辞任の意向を示していたことを発表しており、時系列的には今回の「いじめられっ子発言」とは無関係とされています。それでも、SNS上では「天台宗の僧侶ってこんなもんなの?」「せいじ終わったな」といった厳しい声が殺到し、大炎上となりました。

仏教界からの反論と困惑:天台宗の僧侶とは何か?

今回の騒動に対し、仏教界からも沈黙を破る動きが見られました。広島県福山市の崇興寺の住職・枝廣慶樹氏(浄土真宗)は、7月23日に自身のYouTubeチャンネル「えだぽよ住職」で動画を投稿し、千原氏の言動に苦言を呈しました。その中で枝廣住職は、「天台宗の得度っていうのはお坊さんの卵の状態。正直誰でもなれるんです。修行もテストもない。なりたいですと言えばなれる。ただ師匠となる師僧という人を見つけて弟子になることで、事実上誰でもなれる」と解説し、得度を受けただけで「僧侶」と名乗ることへの違和感を表明しました。

YouTube対談で戸田市議の河合ゆうすけ氏に「いじめられっ子やったやろ!」と発言する千原せいじ。YouTube対談で戸田市議の河合ゆうすけ氏に「いじめられっ子やったやろ!」と発言する千原せいじ。

さらに枝廣住職は、「千原せいじさんを天台宗の僧侶とみなして、“天台宗の僧侶というのはいかがなものか”っていう批判は、天台宗のお坊さんからしたらつらいなと」と述べ、“本物”の僧侶たちへの同情を示しました。また、鎌倉・薬王寺の和尚も自身のX(旧Twitter)で同様に、「伝統仏教宗派の僧侶として言います 天台宗を批判した方々、訂正の上、謝罪してください 天台宗は何一つ悪くない 世紀のとばっちりです」と投稿。千原氏が天台宗の僧侶と名乗っていることが、結果的に天台宗にまで影響を及ぼしている現状が浮き彫りになりました。

テレビ業界が抱える課題:人権問題とスポンサーへの懸念

この騒動は、千原氏の本業であるテレビ業界にも大きな波紋を広げています。あるテレビ局関係者は、「一番の問題はせいじさんがまだ一切、謝罪をしていないことですよ」と指摘。昨年、フワちゃんが暴言騒動の際に真摯に謝罪したにもかかわらず、いまだに復帰できていない状況と比較し、「いじめられっ子発言は人権を軽視しているため、テレビ的には絶対に受け入れられない。テレビ局の営業はスポンサーの顔色をうかがい、せいじさんを番組に出すことを危惧していますよ。いじめというのは身近に起きることですし、せいじさんを見たら嫌な過去を思い出す人もいるのでは…」と、スポンサーや視聴者の感情への配慮が不可欠であることを強調しました。

ドラマ出演を巡る議論:『能面検事』と今後の行方

千原氏は、8月1日放送のドラマ『能面検事』(テレビ東京系)第4話にゲスト出演することが発表されており、SNSでは早くも彼の出演に嫌悪感を示すコメントが見受けられます。テレビ東京の関係者によると、千原氏は“国有地払い下げ問題”に伴う収賄疑惑の舞台となる学園の理事長役であり、ドラマの展開には欠かせない存在のため、出演部分だけをカットすることは非常に困難だといいます。最悪の場合、第4話が“お蔵入り”になる可能性もゼロではありませんが、今のところ局内ではそこまで手を打つことは考えていないようです。テレビ東京に『能面検事』での千原氏の出演部分カットやお蔵入りの可能性について質問したところ、「個別の番組の内容についてはお答えしておりません」との回答がありました。

千原氏は「売り言葉に買い言葉」で、つい口が滑ってしまったのかもしれません。しかし、フワちゃんのケースでも誤ってXに投稿したと明かしていたにもかかわらず、スポンサーや番組は厳しい対応をとりました。今回の騒動の波紋がどこまで広がるのか、今後の動向が注目されます。


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