ドナルド・トランプ前米大統領は、米国の主要製薬企業17社の最高経営責任者(CEO)に対し、処方薬の価格を海外の同水準まで引き下げるよう求める書簡を送付しました。これは、高騰する医療費問題に直面する米国における薬価改革の動きの一環として注目されています。
国際水準への薬価引き下げ要求と大統領令の背景
ホワイトハウスのレビット報道官が明らかにしたところによると、この書簡は31日に送られました。トランプ氏は今年5月に薬価引き下げに向けた大統領令に署名しており、今回の書簡はそれに続く具体的な行動です。大統領令では、医薬品メーカーが政府の期待に応じない場合、政府は薬価を国際基準まで引き下げるための規則制定、あるいはより安価な医薬品の海外からの輸入など、一連の強制措置を講じると警告しています。
トランプ前米大統領、処方薬の薬価引き下げを大手製薬会社に要求
対象企業と書簡の核心
書簡が送付された製薬大手には、イーライリリー、サノフィ、リジェネロン、メルク、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、アストラゼネカなどが含まれます。書簡のコピーは、トランプ氏の交流サイト「トゥルース・ソーシャル」にも掲載されました。
トランプ氏は書簡の中で、過去に政権が受け取った薬価問題解決への提案について厳しく批判しています。「この重大な問題を『解決』するためにわが政権が受け取った提案のほとんどは、同じことの繰り返しだ。責任を転嫁し、業界への何十億ドルもの補助金支給につながる政策変更を要求するものだ」と述べ、業界の対応が不十分であるとの認識を示しました。
市場の反応と業界の主張
この動きを受け、31日の株式市場では、ファイザー、イーライリリー、ギリアド・サイエンシズの各社株価がそれぞれ約2%下落し、NYSEアーカ・ファーマシューティカル指数も3%安となりました。市場は、トランプ氏の要求が企業収益に与える影響を警戒していると見られます。
トランプ氏は、低所得層向けの公的医療保険「メディケイド」への最恵国待遇(MFN)の適用や、米国の患者や納税者への海外での過剰収益の還元などを求めているものの、その詳細はまだ明らかになっていません。各社に対しては、これらの条件に9月29日までに回答するよう要請しています。
一方で、医薬品メーカー側は、大幅な薬価引き下げは、新薬開発のための技術革新を阻害し、結果的に患者の利益を損なうことにつながると主張しています。現在、米国の患者が処方薬に支払う費用は、他の先進国の約3倍とされており、この問題は長年にわたり議論の的となっています。
結論
トランプ氏の製薬大手への薬価引き下げ要求は、米国の医療費高騰問題に対する彼の継続的な姿勢を明確にするものです。これが実現すれば、米国の患者の負担軽減に繋がる可能性がありますが、同時に製薬業界のビジネスモデルや研究開発投資にも大きな影響を与えることが予想されます。今後の各社の対応と、それが米国及び世界の医薬品市場にどのような変化をもたらすか、引き続き注目が集まります。
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