72歳で月7万円の年金収入では、家賃や食費の支払いにさえ困窮し、老後の生活に大きな不安を感じる方も少なくありません。厚生労働省の資料(※1)によると、老齢基礎年金受給者の平均年金月額は約5万5000円であり、多くの年金生活者が経済的な課題に直面しています。このような状況下で、公的年金収入が一定基準以下の年金受給者の生活を支援するため、「年金生活者支援給付金制度」が設けられています。本記事では、この重要な支援制度について、その目的、対象者、そして具体的な給付額を詳しく解説します。
月7万円の年金収入で生活に不安を感じる高齢者
年金生活者支援給付金制度とは?その目的と種類
「年金生活者支援給付金」は、公的年金などの収入とその他の所得額が、国の定める所得基準額以下である年金受給者の生活を支えるため、年金に上乗せして支給される給付金です(※2)。この制度は、経済的に困難な状況にある年金受給者の生活の安定と向上を目的としています。
年金生活者支援給付金には、受給している年金の種類に応じて以下の3種類があります。
- 老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
今回は、最も多くの人が該当する可能性のある「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の支給要件を詳しく解説
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金を受給するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります(※2)。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること。
- 請求者とその世帯全員の市町村民税が非課税であること。
- 前年の年金収入額(障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く)とその他の所得の合計額が、以下の図表1に示す所得基準以下であること。
老齢年金生活者支援給付金の所得基準額を解説する表
(図表1:所得基準、※3を基に筆者作成)
これらの要件をクリアすることで、給付金の対象となります。
年金生活者支援給付金の具体的な給付額と計算方法
年金生活者支援給付金の給付額は、毎年度、物価の変動に応じて改定(物価スライド改定)されますが、令和7年度の基準額は以下の通りです(※2, 3)。
- 老齢年金生活者支援給付金
保険料納付済期間などに基づき、以下の計算式で算出され、(1)と(2)を合計した額が給付されます。- (1)保険料納付済期間に基づく額(月額)=5,450円×保険料納付済期間÷480月
- (2)保険料免除期間に基づく額(月額)=11,551円×保険料免除期間÷480月
- 補足的老齢年金生活者支援給付金
給付額は、保険料の納付済期間を基に算出し、それに調整支給率(図表2参照)を乗じて決まります。- 5,450円×保険料納付済期間÷480月×調整支給率
(図表2:調整支給率 ※原典には図表2の内容が提供されていませんが、構成に合わせて記述)
給付額は個人の年金加入履歴によって異なりますので、ご自身の状況に合わせて確認することが重要です。
年金月7万円という厳しい状況でも、年金生活者支援給付金制度は、年金受給者の生活を経済的に支援するための重要な公的制度です。もしご自身やご家族がこの制度の対象となる可能性があると感じたら、上記の支給要件を確認し、積極的に情報収集を行うことをお勧めします。この給付金が、日々の生活における経済的負担を軽減し、より安定した老後を送るための一助となることを願います。
参考文献
- ※1:厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- ※2:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- ※3:日本年金機構「年金生活者支援給付金」