東京都心、そして横浜から電車で約30分というアクセス便利な立地ながら、世田谷区等々力(とどろき)は、都会の喧騒から一線を画す静かで落ち着いた雰囲気に包まれています。一般的な「住みたい街ランキング」にはあまり登場しないかもしれませんが、地元住民や専門家からは「住み心地抜群」との声が聞かれる穴場的な地域です。本稿では、そんな等々力の知られざる魅力、特にその「東京の田舎」と評される所以と、高い住みやすさの秘密を深く掘り下げていきます。
都心から30分のアクセス:等々力駅周辺の魅力
東急大井町線 等々力駅は、東京都品川駅からも神奈川県横浜駅からもおよそ30分の距離に位置し、通勤・通学、さらにはレジャーにも便利な交通網が整っています。駅の構造は少し特徴的で、券売機があるホームの目の前に踏切があり、それを渡るとすぐにメインストリートである用賀中町通りが線路と直角に交わります。
駅周辺は、チェーン店のローソン、ココカラファイン、成城石井、ドトールなどが並びつつも、昔ながらの蕎麦屋や精肉店といった地域に根ざした店舗も健在で、のんびりとした雰囲気が漂います。この地域で35年の歴史を持つ「有限会社よしとみハウジング」の岩瀬健さんは、「等々力は都心から適度に離れた、いわゆるベッドタウン。まさに住むための街です」と語ります。華やかさはないものの、それが等々力の魅力であると強調しています。
「東京の田舎」が育む豊かな自然と落ち着いた住環境
等々力が「東京の田舎」と称される最大の理由は、その豊かな自然環境にあります。特に、23区内で唯一の渓谷である「等々力渓谷」は、都心にいることを忘れさせるほどの緑豊かな空間を提供しています。この自然環境は、単に風景の美しさだけでなく、都市計画によって厳しく守られています。
等々力渓谷の不動滝付近、都心にありながら豊かな自然が残る世田谷区の風景
等々力の街のほとんどは、都市計画法に基づく「風致地区」に指定されており、宅地造成や建築物の新築、改築、増築などに制限が設けられています。これにより、自然景観の維持と、地域固有の落ち着いた雰囲気が保たれています。さらに、多くのエリアが「第1種低層住居専用地域」に指定されているため、低層階の建物しか建設できません。このため、タワーマンションのような高層建築物が進出することはなく、整然とした低層の住宅街が広がり、住民に安定した生活環境を提供しています。
岩瀬さんは、「隣の自由が丘駅のように賑やかでもなく、二子玉川のようにおしゃれな雰囲気でもないが、風致地区指定や低層住居専用地域であることから自然環境が豊かで、非常に落ち着いた雰囲気が特徴です」と、等々力の独自の魅力を力説します。この特別な環境が、等々力を真の「住みやすい街」たらしめているのです。
等々力は、派手さはないものの、都心へのアクセスと豊かな自然、そして静かで安定した住環境が両立する、まさに「住むと、ちょっといい街」です。都会の利便性を享受しつつも、日々の暮らしに安らぎと自然を求める人々にとって、等々力は理想的な選択肢となるでしょう。
参考文献
- Yahoo!ニュース (2025年8月2日). 末並俊司さんの人気連載「首都圏、住むとちょっといい街」。今回は、世田谷区・等々力(とどろき)を歩きます。. https://news.yahoo.co.jp/articles/23774a430534d927f6eb3e799f33d5a66f1b8ece