高市首相が物価高対策を掲げているのに、なぜ、農水省はコメの値段を下げようとしないのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「農林族である鈴木農水大臣にはそもそもコメの価格を下げる気がない。高市首相は下げる気がない人物に対策を任せるのではなく、具体的に5つの施策を命じればいい」という――。
■鈴木農相は「最も厄介なタイプ」の役人
霞が関に長くいた私の経験から言わせてもらうと、役人には大きく分けて3つのタイプがあるようだ。
一つは、積極的に問題を見つけて対策を提案するタイプである。役人には少ないのではないかと思われるかもしれないが、国のためにと思って役人を志望した人には、意外にこのタイプが多い。それなりに能力を持って成功する人も多いのだが、活発に行動して摩擦も生じるので、その処理に時間がかかることがある。「出る杭は打たれる」の例え通りである。
次のタイプは、言われたことを真面目に忠実にこなす人たちである。多数はこのグループに属する。このタイプが部下にいると仕事がはかどる。ただし、上司が判断を誤らないという前提が必要である。
農林水産省の場合には、上司は大臣ではなく農林族議員であることが多い。「大臣はすぐ変わるが農林族議員は変わらないので、大臣の言うことを聴く必要はない」と公然と発言して更迭された役人もいた。大臣に指示されても農林族議員が反対するような政策(たとえば減反廃止)は実施されない。
最後のタイプは、指示を受けても、最初の対応が「できません」で始まる人たちである。彼らはさまざまな理由や問題点を見つけて仕事を回避しようとする。要するに、前例のない仕事や難しい仕事を引き受けたりすることで、責任を取らされたくないのだ。このタイプが同僚や部下にいると、仕事が進まない。数の上では多くはないが、私にとって、最も厄介な人たちだった。
農水官僚出身である鈴木農水相は、この最後のタイプなのかもしれない。そうだとすると、高市総理も大変だ。






