開幕から3ヵ月が過ぎ、閉幕への折り返し地点を迎えた大阪・関西万博では、夏の本格化とともに暑さ問題が深刻化しています。7月21日には累計の一般来場者数が1100万人を突破した一方で、夏休みシーズン中の大きな課題として、会場内の猛暑と来場者の安全が指摘されています。6月以降7月11日までに、すでに28人が熱中症の疑いで救急搬送されており、会場での暑さ対策が喫緊の課題となっています。
巨大な「避暑地」と化した大屋根リング
大阪・関西万博の大屋根リングで日差しを避ける来場者たち。暑さ対策の休憩場所として利用され、多くの人で賑わっている様子。
真夏の万博会場は、建物内部を除けば日陰が極めて少なく、来場者は長時間にわたり強烈な直射日光にさらされます。特に7月中旬の最高気温35℃を記録した猛暑日には、その過酷さが顕著でした。このような状況下で多くの来場者が「避暑地」として活用しているのが、万博のシンボルでもある大屋根リングです。記者が訪れた際も、リングの下は椅子に座り込む人や、暑さにうだる人で埋め尽くされ、中には疲労から眠り込んでいる高齢者の姿も見受けられました。もはや巨大な休憩所の様相を呈しています。
ある40代の男性来場者は、「とにかく暑すぎて、一旦リングの下に避難してきました。目の前にある人気のイタリアパビリオンは、日差しを避けるためにリングの下に並ぶよう誘導されていました。今日は2時間20分待ちのようです。この炎天下だと、30分並んでいるだけでも頭がクラクラしてくるのに……」と、待ち時間の長さと暑さによる疲弊を訴えていました。
万博会場の給水・冷却スポットの実態
会場内の暑さ対策として、32ヵ所の無料給水スポットが用意されており、7月14日時点での利用回数は合計500万回を超えています。しかし、記者が訪れた日も、水を求める人々の大行列がどのスポットにもできていました。
また、広場「いのちパーク」ではミスト噴射装置が設置されており、15分おきに大量のミストが放出されます。このエリアは多くの子供たちで賑わい、家族連れにとっては格好のオアシスとなっているようでした。ミストによる冷却効果は一時的なものですが、子どもたちが水しぶきを浴びて涼む姿は、炎天下の万博会場における貴重な涼の場となっていました。
記者が見た熱中症の現実と救急搬送
午後2時頃、1時間ほど炎天下を歩き続けた記者は、日陰を求めて再び大屋根リングの下へと向かいました。その時、目の前で休憩していた20代の女性がぼうっとしていたかと思うと、突然その場で嘔吐してしまいました。どうやら熱中症のようでした。心配した周囲の来場者が水の入ったペットボトルや汗拭きシートを差し出すものの、女性の体調はなかなか回復しません。緊迫した状況が続く中、間もなく係員が駆け付け、女性は担架で救急搬送されていきました。この一幕は、暑さ対策が問題視される大阪・関西万博会場の現状を象徴するものでした。
涼を求めるなら空いているパビリオンへ
危険な暑さが続く中、趣向を凝らした展示内容ながら比較的空いている穴場として、インターネット上で話題になっている国連パビリオンと国際赤十字・赤新月運動館を訪れました。到着すると、待ち時間はわずか10分ほどでした。
30代の女性客は、「国連パビリオンでは、国連創設80年の歴史を辿る『タイムライン・ウォール』や、大画面スクリーンに流れるSDGsをテーマにした迫力ある映像展示が多かったです。赤十字のパビリオンでは、東日本大震災で津波の被害を免れた石巻赤十字病院(宮城県)の旗が、復興のシンボルとして展示されていました。どちらも列がまばらで正直あまり期待していませんでしたが、意外に楽しめて、おまけに室内で涼めました。この暑さをしのぐためには、空いているパビリオンでゆっくりするのが一番ですよ」と感想を語ってくれました。展示内容もさることながら、屋内で涼める場所としての価値を強調する声が聞かれました。
結び
猛暑が続く大阪の夏において、大阪・関西万博会場での熱中症リスクは依然として高いままです。給水スポットや冷却ミストなどの対策は講じられているものの、来場者が長時間炎天下にさらされる状況は変わらず、救急搬送されるケースも発生しています。来場者一人ひとりが自身の体調管理に努めることはもちろん重要ですが、運営側にはさらなる暑さ対策の強化と、安全な観覧環境の提供が求められます。この危険な暑さの中で、熱中症で倒れる人がこれ以上続出しないことを願うばかりです。