中国が開発を進める最新鋭の高速鉄道車両「CR450」が、北京で開催された第12回世界高速鉄道会議で初めて公開され、参加者から大きな注目を集めました。設計最高速度が時速450キロメートルに達するこの列車は、中国が世界の高速鉄道技術をさらに牽引する可能性を示すものです。7月8日に開幕したこの国際会議は、国際鉄道連合(UIC)が主催し、中国国内外の鉄道関係者約2000人が参加。その一環として、北京郊外にある中国国家鉄道試験センターでのCR450の視察ツアーが実施されました。
「CR450」の性能と「CR400」との比較
CR450の「CR」は中国鉄道(China Railway)の頭文字を意味し、「450」は設計最高速度を示しています。営業運転に投入された際の営業最高速度は時速400キロメートルが予定されています。現在営業運転中で最速のCR400型高速鉄道車両は、設計最高速度が時速400キロメートル、営業最高速度が時速350キロメートルであるため、CR450は既存車両を上回る高速性能を持つことになります。
第12回世界高速鉄道会議で披露された中国の新型高速鉄道CR450AFとCR450BFの試作車両
最新技術を搭載した2種の試作車
今回の視察ツアーで公開されたのは、「CR450AF」と「CR450BF」という2種類の試作車です。これらは、世界最大の鉄道車両メーカーである中国中車(CRRC)傘下の中車青島四方機車車両がAF型を、中車長春軌道客車がBF型をそれぞれ開発しました。両試作車はともに8両編成で、空気抵抗の低減、駆動効率の改善、車体の軽量化など、様々な最新技術を導入することでエネルギー効率が大幅に向上しています。中国鉄道科学研究院機車車両研究所の張波所長によると、CR450が時速400キロメートルで走行する際のエネルギー消費量は、既存の高速鉄道車両が時速350キロメートルで走行する場合とほぼ同じ水準であるとされています。中国中車の関係者は、CR450の価格は既存のCR400などの高速鉄道車両をやや上回る見通しだと述べています。
営業運転に向けた試験と将来の路線
CR450は順調に進めば2026年に営業運転を開始する予定です。前出の張所長によれば、試作車は2025年6月に湖北省の武漢-宜昌間で行われた試験走行で、最高時速453キロメートルを記録しています。さらに、今年8月からは未供用の高速鉄道路線で、総走行距離60万キロメートルに及ぶ1年間の評価・検証試験が開始されます。
将来的には、CR450は北京と上海を結ぶ京滬高速鉄道や、重慶と福建省厦門を結ぶ渝厦高速鉄道の新規開通区間での営業運転への投入が見込まれています。しかし、複数の鉄道業界関係者の見方では、線路側の設計や駅間距離などのインフラ制約により、CR450がその性能を最大限に発揮できる路線は限定的であるとされています。そのため、初期の投入先は少数の路線にとどまる可能性が高いと予測されています。
まとめ
中国が開発した次世代高速鉄道車両「CR450」は、設計最高速度時速450キロメートルという世界トップクラスの性能を持ち、その高度なエネルギー効率と軽量化技術は、高速鉄道の未来を象徴するものです。2026年の営業運転開始を目指し、すでに時速453キロメートルを記録するなど、順調に開発が進んでいます。当初の投入路線は限定されるものの、京滬高速鉄道や渝厦高速鉄道など、主要区間での活躍が期待されます。CR450の登場は、世界の高速鉄道技術の新たな基準を確立し、交通のあり方に大きな影響を与えるでしょう。
参考資料
- 財新 Biz&Tech (2023年7月14日配信)
- 中国国家鉄路集団ウェブサイト
- 国際鉄道連合(UIC)
- 中国中車(CRRC)公式情報