トランプ大統領、核原潜派遣でロシアに圧力 ウクライナ停戦交渉の行方

米国のトランプ大統領が、ウクライナを侵略するロシアへの圧力を強化するため、戦略原子力潜水艦の派遣命令を明らかにしたことが注目されています。これは、8月8日の制裁発動猶予期限を前に、ロシアから停戦に向けた譲歩を引き出す狙いがあるとみられます。この異例の動きは、米露間の駆け引きを一層活発化させる可能性を秘めています。

異例の原潜派遣指示とその背景

トランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見で、「私は安全を第一に考えている。(メドベージェフ前ロシア大統領から)脅しがあった。我々は国民を守る」と述べ、原子力潜水艦の派遣がロシア側の行動に起因すると強調しました。通常、極めて機密性の高い原潜の動向が公にされることはありませんが、トランプ大統領は出演したテレビ番組で、原潜がロシアの近海にいることも示唆するという異例の発言を行いました。

韓国・釜山港に停泊中の米戦略原子力潜水艦ケンタッキー(SSBN)。2023年7月に撮影された本画像は、米国の核抑止力と地域安全保障への深い関与を象徴する。韓国・釜山港に停泊中の米戦略原子力潜水艦ケンタッキー(SSBN)。2023年7月に撮影された本画像は、米国の核抑止力と地域安全保障への深い関与を象徴する。

トランプ大統領は第1次政権時にも、北朝鮮に対する圧力強化策として、戦略原潜を韓国に寄港させたことがあります。しかし、第2次政権発足後、米国の核戦力を露骨に示したのは今回が初めてであり、その狙いはロシアに対する強力な警告であると分析されています。

「デッドハンド」への強い反応と制裁の可能性

ロシアはウクライナへの攻撃の手を緩めておらず、トランプ大統領の一連の強硬な発言について、「ロシアへの不満の高まりを反映している」(米紙ワシントン・ポスト)との見方が出ています。トランプ大統領は同日、制裁発動の期限までに停戦の合意が成立しない場合、ロシアに「制裁を科す」と改めて強調しました。

特にトランプ大統領が強く反応したとされるのは、メドベージェフ氏が7月31日にSNSで言及した、ロシアの自動核報復システム「デッドハンド(死者の手)」でした。「デッドハンド」は、全面核戦争を想定したシステムで、米国による先制核攻撃によって国家の指導部が全滅した場合でも、残存するミサイルをほぼ自動的に米国に向けて発射するという核兵器の報復システムです。このシステムはソ連時代からロシアに引き継がれ、現在も配備が継続されているとの見方が強いです。

今後の米露関係とウクライナ情勢の展望

制裁発動の期限が目前に迫る中、トランプ大統領としては今後の協議で主導権を握るため、強硬姿勢を取らざるを得なかったとの事情もあるとみられます。米側はスティーブン・ウィトコフ中東担当特使が近くロシアを訪問予定で、ロシア側に停戦を求めると見られています。会談相手は明らかになっていません。この軍事的な圧力と外交努力が、緊迫するウクライナ情勢にどのような影響をもたらすか、国際社会の注目が集まっています。


参考文献:

  • Yahoo!ニュース: 「トランプ大統領が原潜派遣命令、ロシアへの圧力か…デッドハンドに強く反応」
    • URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/8aa7d54695719f4e41e1422fb0a4b38ae03c40df