米国、半導体「包括許可」廃止へ:サムスン・SKハイニックス中国工場に新たな試練

米国商務省産業安全保障局(BIS)は、サムスン電子、SKハイニックス、インテルといった大手半導体製造企業に対し、中国国内の生産施設に米国産半導体製造装置を供給する際の「包括許可」(Validated End User=VUE)を廃止する方針を明らかにしました。これにより、各企業は今後は個別の輸出許可申請が義務付けられ、グローバルな半導体サプライチェーンに新たな波紋を広げることが予想されます。

半導体規制強化の背景と「包括許可」制度

今回の措置は、米国が中国への半導体技術流出を防ぐ目的で、2022年10月にバイデン政権下で導入された輸出管理規制のさらなる強化を意味します。この規制により、米国企業は中国の半導体生産企業への製造装置輸出を原則禁止されました。しかし、当時、サムスン電子、SKハイニックス、インテルなどの多国籍企業が中国に工場を保有している実情を考慮し、一部の企業には「検証された最終使用者」(VUE)として「包括許可」が付与されていました。この制度により、これらの企業は個別の許可手続きや期間制限なしに米国産装置を中国の自社工場に供給することが可能でした。

VEU廃止がもたらす具体的影響

米連邦官報によると、BISは今回の「包括許可」廃止方針を官報掲示日の120日後から実行すると発表しました。これにより、これまでVUEリストに分類されていたサムスン、SKハイニックス、インテルの中国工場は、今後リストから削除されます。BISは、この変更が年間約1000件の追加的な輸出許可申請をもたらすと予測しており、企業側には申請手続きの増加と審査期間の長期化という新たな負担が生じます。この運用上の複雑さが増すことで、中国における生産計画の柔軟性が失われ、経営戦略にも影響が及ぶ可能性があります。

米国オースティンにあるサムスン電子の半導体工場。米国の半導体規制強化が世界中の半導体サプライチェーンに影響を与える可能性を示す。米国オースティンにあるサムスン電子の半導体工場。米国の半導体規制強化が世界中の半導体サプライチェーンに影響を与える可能性を示す。

韓国半導体企業の中国事業への打撃

今回の措置は、中国に大規模な生産拠点を置く韓国の半導体企業にとって特に深刻な影響を及ぼす可能性があります。サムスン電子は中国の西安でNAND型フラッシュメモリー工場を、蘇州で半導体後工程(パッケージング)工場を運営しています。一方、SKハイニックスは中国無錫にDRAM工場、重慶にパッケージング工場、そしてインテルから買収した大連のNAND工場と、計3カ所に半導体生産施設を保有しています。これらの工場はグローバルサプライチェーンの重要な一角を担っており、米国製製造装置の調達が困難になることで、生産活動の萎縮や効率低下に直面する恐れがあります。

韓国政府の対応と今後の戦略

韓国の産業通商資源部は、今回の措置について「政府はこれまで、米商務省とVUE制度調整の可能性について緊密に意思疎通を図り、韓国半導体企業の円滑な中国事業運営がグローバル半導体サプライチェーンの安定に重要であることを米国政府に強調してきた」と表明しました。また、「VUEの地位が撤回されても、韓国企業への影響が最小限に抑えられるよう、米国政府と引き続き緊密に協議していく計画だ」と述べ、外交的な努力を継続する姿勢を示しています。

結び

米国の対中半導体輸出規制強化は、世界経済の地政学的な変化を色濃く反映しており、特に半導体産業におけるサプライチェーンの再編を加速させる要因となっています。サムスン電子やSKハイニックスといった主要企業は、個別許可の取得という新たなハードルに直面し、中国における事業戦略の見直しを迫られるでしょう。この動向は、単に米中間の問題に留まらず、日本の関連企業や世界の技術供給網にも間接的な影響を与える可能性があり、今後の推移が注目されます。

参考資料

  • 米連邦官報(U.S. Federal Register)
  • 米商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security, BIS)
  • 韓国産業通商資源部発表資料