「近視は社会問題」WHO警告、中国の国家対策と日本の課題

世界中で「近視」が「社会問題」として深刻化し、WHO(世界保健機関)は2050年までに世界人口の半数が近視になると警鐘を鳴らしています。中国では国家レベルの抑制プロジェクトが始動する一方、日本では「近視=病気」という認識はまだ薄いのが現状です。眼科医であり、窪田製薬ホールディングスCEOの窪田良氏は、近視の「病気」としての側面と、その対策の重要性を訴えています。

深刻化する近視問題を示す目のイラスト深刻化する近視問題を示す目のイラスト

日本の「近視=病気」認識の遅れと年間4兆円の経済損失

窪田氏によると、近視による日本の年間経済損失は推定約4兆円に上ると推計されます。WHOも近視を「予防すべき病気」と明確に位置付けていますが、日本ではその対策がほとんど進んでいません。「近視になったらメガネやコンタクトレンズで対応すればよい」という認識が一般的で、世界の潮流と乖離しています。この認識の遅れが、経済的損失の拡大や国民の健康リスク増大を招く要因となっています。

中国の国家主導「近視抑制プロジェクト」とその本気度

一方、中国は国家プロジェクトとして近視抑制に本気で取り組んでいます。現在、中国の近視人口は6億人を超え、特に若い世代では深刻で、高校生の近視率は8割に達するという危機的状況にあります。中国政府はこれを「国家と民族の未来の大問題」と位置付け、「近視抑制プロジェクト」を立ち上げました。

プロジェクトでは、2030年までに高校生の近視率を現在の8割から70%以下に抑制することを目標に設定。具体的な対策として、学校に対して「1日2時間以上の屋外活動」の確保を通達し、義務付けています。これは、屋外活動が科学的に近視抑制効果を持つことが証明されているためです。国のトップである習近平国家主席自らが中国SNSを通じて子どもたちに「目を大切にしなさい」と呼びかけるなど、中国政府全体で近視抑制に取り組む姿勢が顕著であり、その本気度が伺えます。

世界の動きから学ぶ日本の近視対策

WHOが近視の「社会問題」化に警鐘を鳴らし、中国が国家を挙げて積極的な対策を講じている現状を鑑みれば、日本も「近視は単なる視力低下ではなく、予防すべき病気である」という認識を社会全体で広め、より抜本的な予防策を推進することが急務と言えるでしょう。国際的な潮流に学び、国民の健康と日本の未来を守るための積極的な取り組みが今、求められています。


参考資料