中国の習近平国家主席とインドのナレンドラ・モディ首相は31日、7年ぶりとなる会談を行い、両国間の関係改善を加速させる方針で一致しました。米印間の貿易摩擦が激化する国際情勢下で、この会談は中印関係に新たな局面をもたらし、日本も参加する多国間協力の枠組み「クアッド」の動向に影響を与える可能性があり、国際社会の注目を集めています。
中国の習近平国家主席とインドのモディ首相が会談で握手する様子
「龍と象のダンス」と中印関係の修復
中国国営中央テレビによれば、習主席は両国を「龍」と「象」に例え、「『龍と象のダンス』の実現は両国にとって正しい選択」と述べ、パートナーシップを強調しました。国境係争を巡り長年対立してきた中印両国ですが、昨年5年ぶりに首脳会談を実施し、関係修復を模索していました。今回の会談で習主席は「長期的視点から中印関係をとらえるべきだ」と表明し、モディ首相も「国境は平和と安定を保ち、まもなく両国間の直行便も再開される」と応じ、具体的な関係改善への期待を示しました。
米印の溝と中国の戦略的思惑
インドはこれまで、日本、アメリカ、オーストラリアからなる安全保障対話「クアッド」のメンバーとして、中国と距離を置く姿勢を示してきました。しかし、トランプ米政権が今月27日、インドからの輸入品への関税を最大50%に引き上げたことで、米印関係は急速に悪化しています。中国はこれを好機と捉え、インドとの関係を強化することで米印間に「くさび」を打ち込み、クアッドの結束を乱し、地域におけるアメリカ主導の勢力を弱体化させるという戦略的狙いがあると見られます。
国際力学への波紋
今回の習近平・モディ会談は、中印関係の進展だけでなく、米中露が複雑に絡み合う国際力学に新たな波紋を投げかけます。特にインド太平洋地域における日本の安全保障や外交戦略にも間接的な影響を与えかねず、主要国の今後の動向が引き続き注視されるでしょう。
参考文献
- TBS NEWS DIG Powered by JNN: https://news.yahoo.co.jp/articles/b7b2cd1362b3e8061d28c697eec570fe7f5f7e2c