近年の物価上昇を受け、生活保護制度の見直しが進められています。2025年10月からは、生活保護の中核をなす「生活扶助」の基準額が引き上げられることが決定しました。本稿では、この引き上げの背景、生活保護制度と生活扶助の概要、今後の見通しについて解説します。
生活保護制度と生活扶助の基本
生活保護制度の目的と種類
生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づき、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、困窮者の自立を支援することを目的としています。主な支援内容は以下の8種類の扶助に分けられ、それぞれの費用を賄います。
- 生活扶助(食費、光熱水費など日常生活費用)
- 住宅扶助(家賃など住居費用)
- 教育扶助(学用品費、給食費など)
- 医療扶助(医療費)
- 介護扶助(介護サービス費用)
- 出産扶助(出産費用)
- 生業扶助(就労や技能習得に要する費用)
- 葬祭扶助(葬祭費用)
生活扶助の詳細
生活扶助は、生活保護受給者の日々の暮らしを支える中核となる扶助です。食料品、光熱水費、被服費など、生活に不可欠な費用が対象となります。支給額は、受給者の年齢、世帯人数、居住地域(1級地-1から3級地-2までの6区分)によって細かく定められています。さらに、母子加算や障害者加算など、個別の状況に応じた加算措置も設けられています。
物価高騰が引き起こした生活扶助の引き上げ
生活扶助の支給額は、2023年10月より2年間の臨時措置として「一人あたり月1,000円」の特例加算が行われていますが、2025年10月にはさらなる本格的な引き上げが決定されました。この増額の背景には、2021年後半から続く物価上昇があります。
特に食料品やエネルギー価格の高騰は、生活保護受給者の生活を圧迫しており、最低限度の生活維持が困難になっています。この状況を改善し、憲法が保障する最低限度の生活水準を確保するため、生活扶助の基準額引き上げが喫緊の課題として実施されます。
物価上昇と生活保護費用の関連を示す硬貨と紙幣のイメージ
本記事では、2025年10月からの生活保護における生活扶助引き上げの概要と、その背景にある物価高騰について解説しました。これは、憲法で保障された最低限度の生活を維持するための重要な措置です。今後の詳細な支給額や適用条件に注目が集まります。