日本映画の歴代興行収入ランキングにおいて、長らく「日本の実写映画」として唯一トップ10に名を連ねていた『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開)が、ついにその座を明け渡した。この変動は、アニメ映画の圧倒的な勢いと、日本の実写映画が直面する課題を浮き彫りにしている。
「鬼滅の刃」快進撃、日本映画の興行収入地図を塗り替える
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』を歴代トップ10から押し出したのは、公開以来破竹の勢いで記録を更新し続ける『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』だ。同作は7月18日の公開からわずか17日間で観客動員数1255万8582人、興行収入176億3955万7600円を記録。これにより、『踊る大捜査線』が保持していた173.5億円の記録を上回り、トップ10入りを果たした。
今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のランクインにより、歴代興行収入トップ10から実写の邦画は姿を消した。現在、トップ10に入る実写映画は、『タイタニック』(1997年公開、277.7億円)と『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年公開、203億円)の海外作品2作のみとなっている。なお、歴代興行収入1位は407.5億円を記録した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年公開)であり、「鬼滅の刃」シリーズはこれで2作がトップ10に名を連ねることとなった。
歴代興行収入を塗り替えた劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の映画館ポスター
邦画実写の「限界」と「踊る大捜査線」の復権の兆し
「鬼滅の刃」の興行収入トップ10入りに対し、SNS上では「誰かが竈門炭治郎は日本経済の柱って言ってて本当にその通り」「実写映画は踊るが最高位だった所に邦画界の限界が見えている」といった声が聞かれ、アニメ映画の強さと邦画実写の現状に対するさまざまな見解が交わされている。
かつて社会現象を巻き起こすほどの人気を誇り、織田裕二演じる青島刑事が劇中で放ったセリフが日本中で流行した『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』がトップ10から去ったことは、時代の変化を象徴する出来事と言えるだろう。しかし、シリーズには新たな動きも見られる。2024年公開のスピンオフ映画『室井慎次 敗れざる者』の続編『室井慎次 生き続ける者』のエンドロールに、再登板はないと見られていた織田裕二演じる青島刑事が登場し、ファンを驚かせた。さらに、2024年12月には『踊る大捜査線 N.E.W.』が2026年に劇場公開されることが発表され、14年ぶりに青島が主人公として帰ってくることが決定している。ファンの歓喜の声は大きく、シリーズ最新作への期待が高まっている。
日本の実写映画が直面する課題:予算不足と海外展開
今回のランキング変動は、日本の実写映画が長年抱えてきた「オワコン化」という議論を再燃させている。その背景には、実写邦画に絶望的なほど制作予算が足りていないという根本的な問題がある。
韓国映画のように、最初から海外展開を前提に製作することで、一定の予算を確保できるケースがあるが、日本はそのような状況にない。むしろ、アニメ映画の方が海外展開がしやすく、実際、大手配給会社もこぞってアニメ映画に力を入れ、海外での活用を狙っているのが現状だ。
日本の実写映画がここから巻き返しを図るとすれば、韓国のように国策として実写映画を強化していくしかないという意見も存在する。しかし、そのためには税金の投入や免除など、国の関与について国民の理解を得る必要がある。さらに、実写映画だけを支援するわけにもいかないため、他の文化産業とのバランスも考慮する必要があり、その舵取りは非常に難しいと言える。映画への情熱だけでは解決できない構造的な課題が、日本の実写映画界には横たわっている。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/b9484a5746b70889e3f83019cc9c4802f702232b