農林中央金庫は6日、2025年4月から6月期(第1四半期)の連結決算において、純損益が583億円の黒字を達成したと発表しました。前年同期の4127億円の赤字から大幅に改善し、実に7四半期ぶりの黒字転換となります。これは、収益性が悪化していた外国債券の売却処理を完了したことで、収支構造が改善された結果です。
巨額赤字からの回復と戦略的転換
農林中央金庫の市場運用資産は、これまで米欧国債への依存度が高い構造でした。2022年に始まった米国での利上げを契機に、外貨調達コストが急激に上昇したことにより収益性が悪化。その結果、2025年3月期には米欧国債などの低利回り資産の売却に踏み切り、同期の純損益は1兆8079億円という巨額の赤字に陥っていました。今回の黒字転換は、これらの戦略的な資産売却と収支改善への取り組みが進展したことを示しています。
債券評価損の現状と今後の見通し
6月末時点での保有債券の評価損は1兆2180億円となり、3月末時点の1兆2350億円から減少しました。農林中央金庫は、債券投資から得られるリターンよりも外貨調達コストの方が高い「ネガティブキャリー」の処理が前期末で終了しているため、直ちにさらなる売却処分が必要とは考えていないとしています。また、今期(2026年3月期)の純損益については、300億円から700億円程度の黒字転換を見込んでおり、現在の進捗は計画に対して順調な滑り出しであると評価しています。
金融市場の背景と農林中央金庫の回復を象徴する高層ビルディング
ポートフォリオの多様化と資産運用戦略
外国債券の売却を進める一方で、農林中央金庫は収益源の分散を図るための新たな投資戦略を推進しています。具体的には、株式やプロジェクトファイナンス、企業への融資を束ねて証券化したローン担保証券(CLO)といった証券化商品への投資を強化しています。市場運用資産残高は40兆7000億円と、3月末比で4000億円増加。償還や為替レートによる減少要因を新規投融資が相殺した形です。特にCLOの投資残高は8兆5000億円に増加しており、3月末の8兆3000億円から着実に積み増されています。
結論
農林中央金庫が7四半期ぶりに黒字転換を果たしたことは、過去の巨額赤字からの回復と、新たな収益基盤確立に向けた取り組みが奏功していることを明確に示しています。外国債券の整理とポートフォリオの多様化戦略を通じて、同行は安定的な経営と持続可能な成長を目指しており、今後の金融市場における動向が注目されます。
参考文献
- Bloomberg (2025年8月6日). 農林中金が7四半期ぶり黒字転換、外債処理完了で-今期も黒字見込む. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/d6f7190346e9e50c6c42c096375325cc4a551d81