米国のジェイミソン・グリア通商代表部(USTR)代表は、3日に放送されたテレビ番組で、新たな対外関税率が「ほぼ確定」しており、現時点では交渉の余地がほとんどないとの見解を表明しました。ドナルド・トランプ前米大統領が関税を経済的影響力を行使する主要な手段として活用している現状が改めて浮き彫りとなっています。
新関税率の「固定」とトランプ大統領の貿易戦略
グリアUSTR代表は、CBSの「フェイス・ザ・ネーション」で事前収録されたインタビューに応じ、今後数日間でこれらの関税率に変更が生じる可能性は低いと述べました。同氏は「これらの多くの関税率は、合意に基づいて設定されたものだ。発表されている合意もあれば、そうでないものもある。米国がその国との間に抱える貿易赤字または黒字の規模によって決まるものもある」と説明し、「こうした関税率は、ほぼ固定されている」との認識を示しました。
トランプ前大統領は、欧州連合(EU)を含む数十の経済圏に対し、新たな厳格な期限として8月7日を設定し、10%から41%に及ぶ関税率を適用しています。グリア代表はさらに、「一部の通商担当大臣らは、引き続き協議を望み、米国と別の形で連携できないか模索している」としつつも、「現在の関税率が、まさにトランプ大統領の関税戦略の全体像を示している」と強調しました。これは、国際貿易におけるトランプ政権のアプローチが揺るぎないものであることを示唆しています。
地政学的ツールとしての関税:ブラジル事例
新たに高関税の対象となる国の一つがブラジルです。南米最大の経済大国であるブラジルは、米国向け輸出に最大50%の関税を課されることになります。トランプ前大統領は、ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領が政権維持のためにクーデターを企てたとして起訴されたことを「魔女狩り」であると公言しており、これを理由の一つとしてブラジルに厳しい関税を課していることを明らかにしています。
米国の貿易政策を主導するドナルド・トランプ前大統領の肖像
グリア代表は、トランプ前大統領が地政学的な目的で関税を用いるのは珍しいことではないと述べました。「トランプ大統領は、他国でも見てきたように、ブラジルにおける法律や民主主義の乱用を目の当たりにしてきた」とし、「このような手段を地政学的課題に用いるのは、一般的なことだ」との認識を示しました。この発言は、貿易政策が単なる経済問題にとどまらず、国際政治や民主主義の状況にまで影響を及ぼすトランプ流の外交手腕の一端を示しています。
今回のUSTR代表の発言は、トランプ前大統領の強硬な貿易政策と、関税が今後も国際的な経済および地政学的戦略の重要なツールであり続ける可能性を強く示唆しています。各国は、これらの「ほぼ確定した」関税率に対応するための新たな戦略を模索する必要に迫られるでしょう。
参考文献
- AFPBB News. (2025年8月4日). 米新関税率は「ほぼ確定」交渉余地なし、トランプ氏の戦略とブラジルへの影響. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/a428b97691fc6ed56ac91884c12c8b45454668b9