大分・日出町「イスラム土葬墓地」問題:岩屋毅前外相が語る多文化共生の課題

大分県中部に位置する人口約2万8000人の小さな港町、日出町で「イスラム教徒土葬墓地」の建設を巡る議論が大きな注目を集めています。この問題は、地域住民、宗教団体、そして地方自治体といった様々な関係者の間で意見が対立し、解決の糸口が見えない状況が続いています。特に、この議論に数年前から携わってきた岩屋毅前外相(68)が、その背景と課題について見解を明らかにしました。

日出町における「イスラム土葬墓地」建設計画の経緯

問題の発端は、別府ムスリム教会が2018年から日出町にイスラム教徒向けの土葬墓地を設置する計画を進めてきたことにあります。教会側は地域住民に対し複数回説明会を開催し、理解を求めましたが、2020年末には町議会で「反対陳情」が採択される事態となりました。

その後、2023年には教会と町の間で「地下水質検査を年1回実施」などの条件付きで、新たな町有地において墓地設置を進めるという協定が結ばれ、一時的には議論が収束に向かうかと思われました。しかし、昨年の町長選挙で「土葬墓地計画の見直し」を訴えた安部徹也氏が現町長に当選。安部町長は就任後初の教会側との面会で、明確に「土地は売却しない」との方針を伝え、計画は再び頓挫することとなりました。この状況を受け、11月18日には日出町に隣接する杵築市選出の阿部長夫県議らが、厚生労働省や内閣府、自民党政調会長に対し「ムスリム墓地に関する国の対応を求める要望書」を提出。この同行者に岩屋毅前外相が名を連ねていました。

岩屋毅前外相が語る、国への要望書提出に至った背景

岩屋前外相は、今回の要望がイスラム教徒や外国人の排斥運動ではないことを強調しています。むしろ、彼の選挙区である別府市には、教職員と学生の半数が外国人である立命館アジア太平洋大学(APU)があり、日本に永住する外国人教職員の埋葬問題は長年の懸案事項でした。別府イスラム協会の代表もAPUの教授であり、彼自身が日本に帰化した経験を持つことから、この問題の解決を強く願っていたといいます。イスラム教徒にとって火葬は深刻な問題であり、土葬墓地の必要性は以前から訴えられてきました。

岩屋毅前外相、日出町のイスラム墓地問題について語る岩屋毅前外相、日出町のイスラム墓地問題について語る

しかし、地元住民の間では「水質汚染が起きるかもしれない」「風評被害を受けるかもしれない」といった心配や、「土葬墓地はとにかく嫌だ」という否定的な意見も根強く、決着がつかない状況が続いています。岩屋氏は「この問題を自治体だけで決めろというのは勘弁してほしい、国がもっと関与してほしい」という地元の議員からの陳情を受け、問題解決に向けた国の関与の必要性を感じています。

現状の「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)では、土葬は必ずしも禁止されておらず、国内の一部地域では今も土葬の風習が残っています。このため、土葬の是非は各自治体の判断に委ねられており、明確な国の指針がないことが、地域社会での混乱を招く要因となっています。法律で「土葬禁止」と明記されていれば話は異なりますが、そうではないため、このような問題が頻繁に発生すると岩屋氏は指摘します。

自治体だけでは対応に限界があると語る岩屋氏。要望書の提出後も自民党内で意見が割れており、問題解決の目処は立っていません。また、土葬墓地が不足している現状から、違法な「闇土葬」を行う在日イスラム教徒も問題視されています。最近では、土葬が認可されている霊園で管理者に無断で遺体が埋葬されていた事例も明らかになるなど、日本人の土葬に対する嫌悪感が徐々に高まっているのも事実です。このような状況の中、岩屋氏は多文化共生の観点から、この土葬問題の具体的な解決策を模索し続ける必要があると考えています。

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