「モンスターを倒した。これで一安心だ」――2018年、滋賀県で発覚した衝撃的な母殺害事件。当時31歳だった看護学生の女性が、同居する母親を殺害し、遺体を切断して遺棄したこの事件は、その残忍性だけでなく、背景にあった「壮絶な教育虐待」の実態が社会に大きな衝撃を与えました。我が子を無惨に殺害した親、学生時代のいじめへの報復など、世界で起きた復讐劇を取り上げた書籍から、この特異な事件の深層に迫ります。この悲劇が浮き彫りにする、日本の家庭内に潜む深刻な問題について、詳細を追っていきます。
凄惨な事件の始まり:女子大生による母殺害と遺体遺棄
2018年、滋賀県守山市で、女子大生による母親殺害、そして遺体切断・遺棄という前代未聞の事件が発生しました。犯行に及んだ女性は、母親から国立大学医学部への入学と医師になることを強く強要され、9年間にも及ぶ過酷な浪人生活を強いられていました。この間、女性は苛烈な教育虐待を受け続け、精神的に極限まで追い詰められていたといいます。最終的に滋賀医科大学医学部看護学科へ入学したものの、母親は看護師になることを許さず、さらに助産師の職に就くよう命令しました。精神的に疲弊しきった女性は、ついに覚悟を決めて母親を刺殺。犯行後には自身のSNSに「モンスターを倒した。これで一安心だ」と投稿していたことが明らかになり、その壮絶な背景が注目されました。
教育虐待により精神的に疲弊した若者を象徴するイメージ画像
河川敷での遺体発見:事件発覚から捜査の進展
事件の発覚は2018年3月10日13時40分ごろのこと。滋賀県守山市の野洲川沿いの道路を歩いていた女性が、河川敷に異常な数のトンビが群がっているのを目撃し、異様な雰囲気に不安を覚えたため警察に通報しました。守山署の警官が現場に到着すると、強烈な腐敗臭が立ち込め、動物の死骸らしき物体が確認されました。警官はひとまずポリ袋をかぶせ、市役所に回収を依頼し現場を離れました。しかし3日後の同月13日、市役所の担当者が警察の立ち会いのもと回収作業に取り掛かろうとした際、その物体が人間の切断された胴体であることを確認し、驚愕しました。滋賀県警はこれを死体遺棄事件と断定し、ただちに遺体を監察医に回すとともに、周辺住民への聞き込み捜査を開始。現場は子供の遊び場や高齢者の散歩コースにも使われる県営公園内であり、目撃情報が得られる可能性が高いと見て捜査を進めました。
翌日に行われた司法解剖の結果、遺体は女性で、年齢は30歳から50歳の間、死後1~2週間が経過しており、自殺の痕跡がないことが判明しました。しかし、身元の特定に繋がるような所持品は一切見つかりませんでした。警察は、やはり徹底した聞き込み調査に頼るべきと判断し、30人体制で近隣住民を戸別訪問して情報を集めました。
容疑者「桐生のぞみ」浮上:母親の行方を巡る警察の問いかけ
そして3月15日、しらみつぶしに近隣を当たっていた警察官が、遺体発見現場から徒歩数分の場所にある「桐生」という表札が掛かった住宅のインターホンを押しました。玄関先に現れたのは、30歳前後の女性でした。警察官が最近この辺りで行方不明になった人物に心当たりがないかと尋ねると、女性は「何も知らない」と答えます。続けて、この一軒家には一人で住んでいるのかと尋ねると、母親と二人暮らしだが、現在母親は外出中であると返答しました。警察官が「お母さんにも話を聞きたいので帰宅時間を教えてほしい」と問いかけると、女性は「聞いていないのでわからない」と答えました。警察官は再訪することを告げ、最後に女性の名前を尋ねました。女性は「桐生のぞみ(当時31歳)」と名乗りました。警察官は手帳にその名前を書き記し、家を後にしました。翌16日も警察は桐生宅を訪れ、「お母さんは在宅か」と尋ねると、のぞみは――。
本事件は、過度な期待とそれに伴う教育虐待が、家庭内でどれほど深刻な悲劇を生み出すかを浮き彫りにしました。桐生のぞみ容疑者が母親を「モンスター」と表現した背景には、長年の精神的苦痛と支配からの解放を求める切実な叫びがあったと推測されます。この事件は、単なる殺人事件としてではなく、現代社会における教育のあり方、親子関係の歪み、そして精神的健康の重要性を問いかける、重い意味を持つものです。
参考文献
- 『世界で起きた戦慄の復讐劇35』(鉄人社)
- Yahoo!ニュース: 女子大生が母親をバラバラに…「モンスターを倒した」医学部9浪の娘(31)が供述した“壮絶な教育虐待”の実態