10月10日に公開が予定されているSixTONESの松村北斗が主演を務める映画『秒速5センチメートル』の実写版で、物語の大人になったヒロイン・篠原明里を高畑充希が演じることが発表されました。このキャスティングは、新海誠監督の初期の傑作であり、『君の名は。』や『天気の子』などの大ヒット作の原点として知られる本作の実写化に対する大きな注目を集めています。高畑充希の起用は、原作ファンを中心に様々な反響を呼んでおり、作品の完成度への期待と一部の懸念が入り混じっています。
『秒速5センチメートル』とは?新海誠監督の原点と作品の構成
『秒速5センチメートル』は、新海誠監督の才能を世に知らしめた出世作として知られるアニメ映画です。本作は、男女の18年間にわたる恋の物語を三つの短編で構成しています。第一話の『桜花抄(おうかしょう)』では主人公とヒロインの小学生から中学生時代が描かれ、その後の運命的な出会いと別れが主題です。第二話の『コスモナウト』では、鹿児島県種子島に引っ越した主人公と、彼に心惹かれる地元の女子高生の淡い恋模様が綴られます。そして第三話の『秒速5センチメートル』では、東京で社会人になった主人公が、それでも明里の幻影を追い求める姿が描かれ、切なくも美しい物語が完結します。
高畑充希のキャスティングに対する原作ファンの「誤解」と「懸念」
高畑充希さんのキャスティング発表後、特に一部の原作ファンの間で議論が巻き起こりました。Yahoo!ニュースの見出しが「実写『秒速』ヒロインは高畑充希」と大きく報じられたことで、「大人になったヒロインの物語がメインになるのではないか」「原作を大幅に変え、改悪されるのではないか」といった誤解が生じ、批判的な声が殺到する事態となりました。
記事のコメント欄には、「高畑さんには何の責任もないが、大人の事情で原作を捻じ曲げて大人時代をメインにする改悪ははやめ全く別の作品として作ってほしい」といった原作の忠実性を求める声や、「高畑さんがどうこうより、年齢的にもう少し若い世代の方をイメージしていました」といった年齢差に関する懸念が寄せられました。
高畑充希の適性とその役割:新海監督のコメントが示す方向性
しかし、現段階で発表されている情報では、実写版が社会人編をメインに描くとは一切明記されていません。映画ライターによると、原作に忠実であれば、高畑さんが演じる大人になったヒロインのシーンはそれほど多くないと推測されています。また、社会人編の主人公が28歳から29歳の設定であるのに対し、撮影時に32歳だった高畑さんの年齢差は問題ないとされています。撮影が昨年秋に行われたとされており、高畑さん自身が当時結婚を控えていた時期であったことを考えると、結婚を控える「大人になった」ヒロインを演じる上では、むしろ適任であったとも考えられます。
原作者である新海誠監督も、試写を鑑賞した感想として、「今回の実写映画では当時のその不器用な種が、青さも含んだままに見事な結実となっていました。『秒速5センチメートル』を作っておいて良かったと、(ほとんど初めて)心から思えました」とコメントを寄せており、原作アニメの世界観が大きく損なわれることはないと示唆しています。監督のこの言葉は、作品への深い理解と、実写版の質の高さへの信頼を表していると言えるでしょう。
実写映画『秒速5センチメートル』で大人になった篠原明里を演じる高畑充希
主要キャストが織りなす作品の世界観
作品の鍵を握る幼少期のキャラクターには、オーディションでそれぞれ約500人の中から選ばれた11歳の上田悠斗さんと12歳の白山乃愛さんが起用されています。彼らの演技が、主人公とヒロインの繊細な関係性の原点をどのように表現するかが注目されます。また、高校時代の主人公を演じる青木柚さんは現在24歳ですが、過去に映画『うみべの女の子』で公開時20歳ながら14歳の中学生役を見事に演じ切った実績があります。その経験から、今回の男子高校生役においても、彼の儚さと危うさを秘めた演技が期待されており、ファンの不安を払拭する要素となるでしょう。
高畑充希さんのキャスティングを巡る初期の反響はありましたが、新海誠監督の太鼓判や、他の主要キャストの選定理由から、映画『秒速5センチメートル』実写版は、原作の世界観を尊重しつつ、新たな魅力を引き出す作品となる可能性を秘めています。この冬、多くの観客が彼らの18年間の恋の物語に再び感動することでしょう。