自民党総裁選、石破首相の「前倒し検討」決定:深まる党内対立

自民党内で「石破おろし」の動きが加速している。8日に開催された自民党両院議員総会では、石破茂首相(総裁)の2027年9月の任期満了を待たず、総裁選の前倒しを検討する方針が決定された。総会では石破総裁の退陣を求める声が多数を占めたとされる一方で、「権力闘争だ」と党内の混乱を嘆くベテラン議員の意見も聞かれた。この決定は、党内の対立が一段と深まっている現状を示唆している。

自民党両院議員総会で挨拶する石破茂首相自民党両院議員総会で挨拶する石破茂首相

両院議員総会のスムーズな進行とその背景

7月28日に開かれた自民党両院議員同懇談会が4時間半にわたり紛糾したのとは対照的に、今回の両院議員総会は予定通り2時間であっさりと終了した。財務副大臣の斎藤洋明氏は、党本部前での取材に応じ、総会の様子を明かした。斎藤氏によると、「総裁選前倒し実施の是非を問う段階に進む」という結論に至った時点で、総会側から打ち切りが提示され、異論なく終了したという。斎藤氏は自身も総裁選前倒しを訴えるため挙手したが、発言の機会は回ってこなかったと述べている。しかし、賛否がバランス良く発言者に当てられていたため、恣意的な人選ではなかったとの見解を示した。

石破総裁の発言への評価と期待

総裁選前倒しに向けた次のステップに進むことが決まり、総会の結論自体には満足したという斎藤氏。しかし、その決定を受けての石破総裁からの言葉が少なかったことには、残念な気持ちを抱いたという。斎藤氏は、石破総裁が「関税交渉がまだございます」と繰り返すばかりで、その発言内容に「新味がない」と感じたことを指摘した。総裁自身が生まれ変わった新しい考えで党運営を行う可能性を感じた議員は少なかったのではないかとの見方を示し、総裁選の是非を問う段階はまだ始まったばかりであり、手続きには時間を要すること、そして関税交渉の後始末には十分な時間があると述べた。

関税交渉と総裁選前倒しの関連性

石破総裁が続投の理由として挙げた関税交渉について、参院議員の片山さつき氏も同様に、それが理由にはならないとの見解を示している。片山氏は、トランプ政権は従来の政権とは異なり、交渉内容が合意と違っていても、トランプ大統領のSNSでのつぶやきがその瞬間の事実となるような特殊性があると説明した。そのため、担当大臣や首相が誰であれ、その連続性は問題ではないと述べた。さらに、総裁選を前倒ししても「政治的空白にはならない」と断言し、党内での総裁交代が国政運営に与える影響は限定的であるとの認識を示した。

少数派の擁護と党内混乱への懸念

一方で、少数派ではあるものの、石破総裁を擁護する議員も存在する。参院議員の鈴木宗男氏は、党内で急速に広がる「石破おろし」のムードに嫌悪感をあらわにした。鈴木氏は、衆院選、都議選、参院選での自民党の敗因は「裏金問題が一番」であると強調し、この問題に抜本的に対処しない限り、総裁選をいくら行っても事態は好転しないとの見方を示した。「総裁選をやれ」という声は「ある種の権力闘争」であると批判し、戦後80年を迎える時期に党内がこれほど混乱している状況は「英霊に申し訳ない」とまで語った。鈴木氏は、総裁選の前倒しは「一部の議員が徒党を組んで、数で示し合わせて話し出したこと」であるとし、その是非については8月末に党内で参院選の総括報告が出てから判断すべきだと強く訴えた。また、一部の候補者の選挙活動における努力不足や、SNS活用が不十分であったことなど、自民党の反省点が多数あると指摘し、これらを総括した上で、今後の対応を検討するのが「まっとうな議論」であると主張した。

結論

自民党両院議員総会での総裁選前倒し検討の決定は、石破茂首相に対する党内の強い不満と、次期総裁を巡る権力闘争が顕在化したことを示している。主要議員からは、石破総裁のリーダーシップや発言内容に対する厳しい評価が相次いだ一方、党内の混乱そのものに対する懸念や、選挙敗北の根本原因は裏金問題にあるとの指摘もなされた。今回の決定は、自民党が直面する内部対立と課題の根深さを改めて浮き彫りにし、今後の党運営と日本の政治状況に大きな影響を与えることが予想される。