和歌山「正論」懇話会の第98回講演会が2日、和歌山市のホテルアバローム紀の国で開かれ、前統合幕僚長の河野克俊氏が「我が国の今後の安全保障と自衛隊」と題して講演した。海洋覇権を狙う中国、韓国との軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)問題などを通じて浮き彫りになった日韓の北朝鮮に対する脅威認識の違いなどに危機感を示した。そのうえで「日米同盟はますます重要になる」とし、「日本として、課せられた責任と義務を果たさなければならない」と述べ、自衛隊を明記する憲法改正の必要性を強調した。要旨は次の通り。
■「前線の自衛官は気を抜けない」
平成26年に私が統合幕僚長に就任した当時、日本は尖閣諸島国有化の影響で中国とは相当厳しい状態だった。安全保障上の脅威は短期的には北朝鮮だが、中長期的にみると中国だ。
中国は1980年代、●(=登におおざと)小平のもとで経済発展を推進するなかで海洋権益が不可欠と判断し、海軍力を強化した。その結果、日本と海洋で衝突するようになった。
海洋進出をもくろむ中国にとって、日本列島や特に尖閣諸島は目障りな存在だ。中国公船は今、尖閣に押し寄せてきている。
自衛隊としても一歩も引かないという形で押しとどめているが、これを緩めると絶対に来る。少なくとも前線の自衛官は全く気を抜ける状況ではない。
■北朝鮮の非核化は難しい
朝鮮半島情勢では、2017年の北朝鮮によるミサイル実験を巡る攻防が一番厳しかった。米朝が激しく応酬し、トランプ大統領は全てのオプションがテーブルの上にあるとした。北朝鮮の出方によっては米国の軍事行動の可能性はあると思っていた。