ラサール石井氏、参院選の聖地・亀有で演説 『こち亀』避け『ONE PIECE』引用の戦略

2025年参院選の選挙戦が終盤を迎えた7月13日、比例代表候補として社民党から出馬しているタレントのラサール石井氏(69)が、東京・JR亀有駅前で街頭演説を行った。亀有といえば、自身が主人公・両津勘吉の声優を務めた人気アニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の舞台として知られる「聖地」だが、この日の演説では『こち亀』や関連ワードには一切触れず、別の少年誌連載作品のタイトルを引用し支持を訴える異色の戦略をとった。

参院選の社民党比例代表候補、ラサール石井氏がJR亀有駅前で街頭演説を行う様子参院選の社民党比例代表候補、ラサール石井氏がJR亀有駅前で街頭演説を行う様子

演説内容と現場の反応

強い日差しが照りつける正午過ぎ、ラサール石井氏は『こち亀』主人公と「ようこそ亀有へ」の文字が描かれた看板の前に設置されたお立ち台に登壇した。連日の選挙活動で声はかすれ気味だったが、「葛飾の皆さん、亀有の皆さん、ラサール石井が亀有にやってまいりました」と力強く第一声を発すると、集まった約100人の聴衆から大きな拍手と歓声が上がった。

演説では、「みんなが少しずつ我慢して弱い者を助ける。それが下町の心じゃないですか」と聴衆に問いかけ、消費税廃止や排外主義への反対など、社民党の政策を訴えた。亀有での街頭演説は初めてだったというが、「手応えはとても良かった」と語り、自信をのぞかせた。

JR亀有駅前での街頭演説後、並んで写真に収まるラサール石井氏(左)と社民党の福島瑞穂党首JR亀有駅前での街頭演説後、並んで写真に収まるラサール石井氏(左)と社民党の福島瑞穂党首

『こち亀』聖地での選択

亀有は、ラサール石井氏が長年声優を務めた『こち亀』の舞台であり、ファンにとってはまさに「聖地」だ。公示日の7月3日、報道陣に亀有での演説予定について聞かれた際には、「今、両さんの声なんて出したらフジテレビや集英社に怒られちゃうんじゃないかな」と述べ、著作権などへの配慮からか、明言を避ける姿勢を見せていた。

しかし、選挙戦最終盤となるラストサンデーに一転、「聖地」入りを決断。この判断が『こち亀』を意識したものか問われると、「そういう意味も含んでいます」と答え、話題づくりを優先したことを示唆した。

一方、亀有での演説を告知した前日の12日には、SNS上で「こち亀を政治利用するな」「それは悪手だ」といった批判的な意見も上がっていた。こうした背景もあり、この日の実際の演説では、『こち亀』『両津』といった作品名や登場人物の名前は一切使わず、『葛飾』『亀有』といった地名のみに触れるにとどまった。陣営側は、この対応について「作品に対しての我々の配慮です」と説明している。

『ONE PIECE』に託したメッセージ

『こち亀』に触れない代わりにラサール石井氏が持ち出したのは、同じ「週刊少年ジャンプ」で連載され、フジテレビでアニメも放送されている人気作品『ONE PIECE』だった。

氏は「この国は船。乗組員は皆さん。社民党だからといって舵を左に切ったりしません。もちろん右にも切りません」と述べ、自身の政治スタンスを説明。その上で、「真っすぐ“ワンピース”に向かって、皆さんと一緒に進んでいこうじゃありませんか」と聴衆に呼びかけ、『ONE PIECE』を理想の未来や目標への航海に例えた演説を展開した。

社民党の行方

今回の参院選は、社民党にとって極めて重要な選挙となる。政党要件を維持するためには、比例代表で3人以上の当選者を出すか、全国で得票率2%以上を達成する必要がある。ラサール石井氏が、タレントとしての知名度を活かし、窮地にある社民党の「救世主」となり得るのか、その選挙結果に注目が集まっている。

結論

ラサール石井氏の亀有での街頭演説は、『こち亀』の「聖地」でありながら作品に触れないという、話題性と配慮の両立を図った戦略的なものだった。人気漫画『ONE PIECE』を引用した独特のメッセージは、有権者の関心を引く狙いがある。比例代表候補としての彼の戦いが、政党要件維持の瀬戸際に立つ社民党にどのような影響を与えるのか、最後まで目が離せない。

参考資料

Source link